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DIY、冒険を求める(続)
第二の箱庭 その24
しおりを挟む休人たちに物資の提供(有料)をして、この箱庭でやっていけるよう延命させていく。
彼らが諦めない限り、定期的に俺はアイテムの販売を行う……住民が認めるまでは。
「まさか、こっちの形で営業停止になるとはな……うんうん、良かった良かった」
情報端末に記されているのは、自分たちが休人たちを支援するという表明。
それは消耗品を一手に担っていた大企業、休人たちは交渉を粘り強く続けていた。
結果、彼らは多くの恩を売りその分の礼を求められた──言い方はあれだが、それだけ休人たちもいろいろな場所で活躍しているわけだな。
「大企業がやりました、前例ができましたというのはでかい。一番大変な一歩目をやったヤツが現れれば、先に続けとどんどん増えていくだろうな」
《旦那様のご推察通り、次々と表明を行う企業が現れております。中小もまた、自分たちの支援こそが彼らを救うと意気込んでいる様子です》
「管理者も大変だな……絶対裏でいろいろと手を回しているだろう、これ」
何やら、意図的な情報操作の気配がちらほらと感じられるとのこと。
俺はそちらについては知らないが、休人たちがたまに漏らした近況からそう思った。
曰く、裏でこっそりと頼まれ事をされるようになったとか。
あくまで頼み事は[クエスト]ではないそうだが、それでもやっていった。
その結果、ある程度の信頼を勝ち得ることはできたそうだ。
その積み重ねの結果が、目の前に記事として書かれている。
ツッコミたい点は多々あるのだが、今回の俺は住民たちには何もせず、あくまで休人たちに対して支援を行っただけ……あまり口出しできないのも事実だ。
いつもいつも前線で無双、なんてことができるわけじゃないからな。
大人しく見守るだけに徹して、これからどうなるかを見ておきたい。
「──で、今日行くんだっけ?」
《はい。これより数時間後、現実世界では夜の9時頃に》
「子供はちょっと夜更かしだが、大人の都合とかを考えるとしょうがないよな……」
たとえ休日でも忙しい大人は忙しいのだ。
そういった連中のことも考慮した結果、やや遅めの時間になったらしい。
「今回は上手くいきそうか?」
《充分に準備もできておりますし、住民たちからの支援も期待できます。おそらくは、試練の達成は可能でしょう》
「そうか…………なら、そろそろ俺たちの逃亡生活も終わりだな」
初日の犯行から、今なお俺に対する追跡は続いていた。
これもある意味、管理者の手が入っているのかもしれない。
俺が【救星者】であることは、箱庭の管理者であれば理解できるだろう。
そんな俺が試練に混ざっていれば、正常に試練は機能しなくなる。
だからこそ、俺が試練に乗り込まないようにお巡りさんこと魔工機士を差し向けて牽制し続けている──ついでにその方が、休人に向かう数が減るからな。
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