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DIY、冒険を求める(続)
第二の箱庭 その17
しおりを挟む箱庭02 南東 休人居住区
お巡りさんたちに手を出した結果、俺は犯罪者になった。
ここに来てわずか半日足らず……それでも俺はこの場に残り続けている。
「──ほう、やはり話題になっているみたいだな」
目を通すのはこの箱庭の情報媒体、現実世界で言うところの新聞だ。
物質的な重さは無く、使うのはもちろんそれ用の『魔動機盤』。
契約している会社から、毎日送られてくる前日までの情報。
その中には当然、俺が起こした施設でのやり取りも記されていた。
「あの施設はターミナル、お巡りさんたちは魔工機士と言うのか。ふむふむ、犯人ツクルは現在逃亡中……情報を求む、と」
《旦那様に関する情報、その一部を意図して隠しているようですね。目に見えて分かる狼の使役、そして謎の花を咲かせる力。それ以上のターミナル内で見せた情報がどの情報媒体にも伝えられておりません》
「[モルメス]、それに機械のハッキングとかだよな? やられたけど原因不明、現在調査中って……これはいつか広まるのか?」
《いえ。休人たちの持ち込んだ道具は解析されているでしょうが、[モルメス]クラスの代物はまだサンプルも少ないでしょう。奪い合いはしても、旦那様から奪うまでには至らぬはずです》
俺の持つ[モルメス]は、多くの敵対存在との経験値によって神器と化している。
さすがに休人も、そんな神器レベルのアイテムはそうぽんぽん持っていないだろう。
「それで、俺はこれからどこに行けばいい。一先ずは休人が押し込められているこっちに来てはみたが……捜索の目はバッチリここにも来ているな」
現在、俺が居るのは休人たちが拠点とするための施設が多くならば南東区。
その一つ、ある休人が借りている部屋──に勝手に上がり込んでいる形だ。
もう犯罪をやっているので、軽犯罪は気にせずやっていくスタイル。
今回の場合は、家宅侵入罪辺りが適応されてしまうだろう。
先ほど見た『魔動機盤』の情報媒体も、ここの住人が契約している物だ。
使用自体は誰でもできる、それが便利なところである。
「そのうちここも割れる。そうなる前に、次の場所に行かないと」
《いくつか目星は付けておりますが、いづれも時間経過ですぐに発覚します。これまで同様、旦那様には少々お手を煩わせてしまいますが……》
「その辺はいいよ。まあそうだな、EHOの俺はそれをメインでやってきたわけだし」
肝心なのは、俺が犯罪者として扱われていること──ではない。
結局のところ、犯罪者だろうが何だろうが使える者は使うという人間は居る。
要はメリットとデメリットを秤に掛け、どちらに傾くかということだ。
──そしてそれをメリットに傾けるのは、ある意味得意だからな。
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❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
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