虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、冒険を求める(続)

第二の箱庭 その14

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 外に出た俺を待っていたのは、サイレンを鳴らす空飛ぶ乗り物だった。
 その乗り物の下には、銃型の『魔動機盤』と思しき兵器が取り付けられている。

『繰り返す、お前はもう完全に包囲されている! これ以上の警告は無い! 十数えても投降しない場合、強硬措置に出るぞ!』

 近未来な光景に目を奪われ、しばらく立ち尽くしていた俺に痺れを切らしたのだろう。
 さっさと警告文を言い終えると、カウントダウンを始めるお巡りさんっぽい人。

「はてさて、どうしますかね……」

『6、5、4……』

「ですが、ここでは楽しむとしましょう」

『3、2、1……』

 人という生き物は、新しい玩具を手に入れるとそればかりを使う生き物だ。
 新作のゲーム、カード、アプリ……形は違えど、しばらくはそれから目が離せない。

 まあなんだ、この世界の法則もある程度は『SEBAS』が読み取っている。
 ……使用に問題が無いのならば、使いたくなるのが人の性というものだ。

「──“再生入器:呼群波狼シャロウ”」
『0──鎮圧開始!』

 始まりはカウントダウンの終わりと共に。
 勾玉を握り締め、能力行使を宣言すると拍手を始める俺。

 対するお巡りさんたちは、『魔動機盤』に魔力を籠めて弾丸を生成していく。
 撃ち出される弾丸の雨──それを受け止めるのは、どこからともなく現れた狼たち。

『なっ……!?』

「さぁ、進軍です」

 土から植物から、果ては空気から。
 様々な物質が狼の形を取り、次々と前へ進み出る。

 一体一体は弱く、弾丸一発で何体も倒せるが……それ以上の速さで数は増えていく。
 その間、ただ拍手を繰り返す俺を見て彼らは行動を変える。

《魔力波の傍聴に成功しました。情報を流します》

『──狼たちは囮だ。つまり、今のヤツはあの動作をし続ける必要があるが、予め何らかの仕込みをしている。でなければ、あの場に留まる必要は無い。部隊を二つに分け、片方がヤツを直接討つぞ』

「…………なるほど、普通はそう考えますよね。まあ、誘いましたけど」

 はっきり言って、固有種の能力はチートそのものだ。
 強者が束になって挑む想定で生み出される存在なので、それに見合う性能を持つ。

 ……そんな個体の一体が、わざわざ身動きが取れなくなる能力を使うと思うか?
 無論無いし、その能力をそのまま引き継いでいる俺にも同じくデメリットは無い。

 ただひたすらに、消費する燃費が悪いだけだ──レベリングで稼いだ種族経験値が、凄まじい速度で消費されていく。

「これの便利なところは、遺製具レリック経由であるがゆえに私自身のキャパシティの負担にまったくならない点ですね」

 つまり、『超越生者』や『プログレス』の擬似権能を普通に使うことができる。
 ──直接狼の支援はできないが、間接的にならこの状況でもいくらでもできるわけだ。

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