上 下
2,416 / 2,733
DIY、冒険を求める(続)

第二の箱庭 その14

しおりを挟む


 外に出た俺を待っていたのは、サイレンを鳴らす空飛ぶ乗り物だった。
 その乗り物の下には、銃型の『魔動機盤』と思しき兵器が取り付けられている。

『繰り返す、お前はもう完全に包囲されている! これ以上の警告は無い! 十数えても投降しない場合、強硬措置に出るぞ!』

 近未来な光景に目を奪われ、しばらく立ち尽くしていた俺に痺れを切らしたのだろう。
 さっさと警告文を言い終えると、カウントダウンを始めるお巡りさんっぽい人。

「はてさて、どうしますかね……」

『6、5、4……』

「ですが、ここでは楽しむとしましょう」

『3、2、1……』

 人という生き物は、新しい玩具を手に入れるとそればかりを使う生き物だ。
 新作のゲーム、カード、アプリ……形は違えど、しばらくはそれから目が離せない。

 まあなんだ、この世界の法則もある程度は『SEBAS』が読み取っている。
 ……使用に問題が無いのならば、使いたくなるのが人の性というものだ。

「──“再生入器:呼群波狼シャロウ”」
『0──鎮圧開始!』

 始まりはカウントダウンの終わりと共に。
 勾玉を握り締め、能力行使を宣言すると拍手を始める俺。

 対するお巡りさんたちは、『魔動機盤』に魔力を籠めて弾丸を生成していく。
 撃ち出される弾丸の雨──それを受け止めるのは、どこからともなく現れた狼たち。

『なっ……!?』

「さぁ、進軍です」

 土から植物から、果ては空気から。
 様々な物質が狼の形を取り、次々と前へ進み出る。

 一体一体は弱く、弾丸一発で何体も倒せるが……それ以上の速さで数は増えていく。
 その間、ただ拍手を繰り返す俺を見て彼らは行動を変える。

《魔力波の傍聴に成功しました。情報を流します》

『──狼たちは囮だ。つまり、今のヤツはあの動作をし続ける必要があるが、予め何らかの仕込みをしている。でなければ、あの場に留まる必要は無い。部隊を二つに分け、片方がヤツを直接討つぞ』

「…………なるほど、普通はそう考えますよね。まあ、誘いましたけど」

 はっきり言って、固有種の能力はチートそのものだ。
 強者が束になって挑む想定で生み出される存在なので、それに見合う性能を持つ。

 ……そんな個体の一体が、わざわざ身動きが取れなくなる能力を使うと思うか?
 無論無いし、その能力をそのまま引き継いでいる俺にも同じくデメリットは無い。

 ただひたすらに、消費する燃費が悪いだけだ──レベリングで稼いだ種族経験値が、凄まじい速度で消費されていく。

「これの便利なところは、遺製具レリック経由であるがゆえに私自身のキャパシティの負担にまったくならない点ですね」

 つまり、『超越生者』や『プログレス』の擬似権能を普通に使うことができる。
 ──直接狼の支援はできないが、間接的にならこの状況でもいくらでもできるわけだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...