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DIY、冒険を求める(続)
第二の箱庭 その09
しおりを挟むこの箱庭の技術根幹となる部分を、調べることができないままに時間切れ。
不思議な装置『魔動機盤』、:DIY:でも根幹が分からないという謎っぷり。
しかし、それを調べる権限は今の俺には無い……それだけでなく、すでに部屋の周りを武装した集団が取り囲んでいた。
「──ツクル様、お迎えに上がりました」
「はて、お迎えと言いますと……後ろの方々と何かご関係が?」
「──ツクル様、お迎えに上がりました」
「…………答える気は無いと?」
「──ツクル様、お迎えに上がりました」
同じことを繰り返す受付嬢の声。
だが、俺は気づいていた──声はすれども彼女の居るはずの場所に、俺を殺し得る警鐘は無く、また生体反応も無いことに。
あからさまというかなんというか、ある意味舐められているのかもしれない。
もちろん、一般レベルならば分からない偽装はされているが……『SEBAS』だし。
《結界を展開します》
「ナイスタイミング!」
周りに結界が展開されたのとほぼ同時、扉の向こう側から射出される弾丸の雨。
破壊された扉、大きな風穴から投げ込まれたナニカ──そこから煙が噴き出す。
「おぉー、テレビとかでよく見るヤツー」
『目標健在、結界の使用を確認。魔喰弾の使用を許可する』
「ん? ちょっと気になる単語ががが──」
人が話している最中でも、問答無用で発砲が行われる。
それもまた、結界が防ぐのだが──受ければ受けるほど、結界が薄くなっていく。
ガスマスクっぽい装備やら、プロテクターのような物に身を包んだ謎の集団。
まさしく、鎮圧用の部隊といった連中が俺に近づいてくる。
《どうやら、魔力を削られているようです。対策はいかようにでも》
「わざと捕まる選択肢は無いかな? しからば、前進あるのみ!」
『も、目標魔力喪失! ハァ、死亡反応を確認した!? よく見ろ、現に目の前にヤツは居るじゃないか!』
結界は削り切られ、煙も吸った。
俺はどこかで見ているであろう上司の皆様からすれば、戦闘不能状態だろう……しかし現場の皆さんからすれば、俺はまだ健在。
「──[モルメス]」
『ば、化け物が……』
ずいぶん懐かしい名を呼び、小さな刃を取り出し前へ進み出る。
抵抗するように彼らも弾丸を放ち続けていたが、それでも止まらず──メスを振るう。
何人かは状況に狂い、叫びながら銃弾を放つなどしたがすべて無駄。
接近戦を挑む者、逃げ出そうとする者も等しく無力化してメスを差し込んだ。
「さて、次は貴方たちです」
気づいていたが、何もしていなかった隠しカメラに向けてそう一言。
気分は恐怖の殺人鬼、鼻歌を交じえながら開かれたドアから外へ向かうのだった。
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