虚弱生産士は今日も死ぬ ―小さな望みは世界を救いました―

DIY、冒険を求める（続）

第二の箱庭 その06

『──まずは、こちらをご覧ください』

　箱庭内部への潜入を果たした俺は、受付でやらかしたようでいきなり隔離された。
　暇だったので物を弄って時間を潰していたのだが、『ＳＥＢＡＳ』はもっと凄い。

　言われるがままに機械を弄り、お手製の装置（主にハッキング用）を取り付ければあら不思議──別の部屋で行われている、対俺に関する話し合いを見ることができた。

　プロジェクターに投影されているのは、先ほどの受付嬢と俺から読み取ったであろう無数の情報群。

　どうやら、リモート会議よろしくその場に集まらずとも話し合いはできるようだ。
　……時代の進歩ってのは、どこの世界も似たり寄ったりなのかな？

『能力値が低く、スキルもごく僅か。加えて神の祝福を持つ……ここだけ見れば、彼はすぐにでも塔無しの区画へ送りたいものだが』

『だが職業、それに称号だな。間違いなく希少なものであろう』

『なるほど、選び抜かれた受付嬢である君が我々に指示を仰ぐのは当然だ……彼は、どうも手に余りそうだ』

　どうやら休人たちの扱いは、ランク的なもので分けられていたらしい。
　そういった情報は、今まで外部に漏れていなかったのだが……大丈夫なのだろうか？

《情報の解析がいくつか済みました。どうやらこの箱庭、かなり特殊な仕様のようです》

「まあ、そもそもＳＦ感が凄いことから察してはいたけど……」

《──魔物を人が倒す必要がほとんどない、大半が機械で処理される箱庭のようです》

「…………ふむ」

　一つ目の箱庭は、もしも古代の世界に人族が居たら……みたいな場所だった。
　結果、彼らは植物を操る力を手に入れてどうにか生き残ることに成功する。

　そしてこの二つ目の箱庭、こちらはある程度の機械文明に魔力が突然発生したらしい。
　まあ要するに、地球にもしも魔力が生み出されるようになったら……というＩＦだ。

　俺たちの時代よりも少し前を転換点とし、そこから一気に時間が飛んでいる。
　そして今、ＳＦ感を感じさせるような箱庭になっているようだ。

「それで、俺の何が警戒されている？」

《彼らも休人たちとすでに接触を図り、どのような者たちなのかは理解しております。変革、破壊、変化の象徴。中でも、固有の職やスキルを持つ者たちの影響力に彼らは強い警戒を抱いています》

「……そんな中、まったく自分たちの技術では読み取れないような希少な能力持ちがここに来たと。うんうん、彼らじゃなくても間違いなく警戒するよ、これは」

　まだすべてが分かったわけじゃないが、古代箱庭同様にただそのままやっていけるほど甘くは無いのだろう──あくまで箱庭、ここは実験場なのだから。