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DIY、冒険を求める(続)
第二の箱庭 その03
しおりを挟むE8 黄龍河 休人たちの拠点(付近)
仙人たちとのやり取り。
休人が河に拠点を築き、その結果として帝国とのパワーバランスが崩れてしまうかを俺は懸念した。
だが、仙人たちの王である【仙王】。
そして、『超越者』である『闘仙』が気にしないと言ってくれた──ならば俺も、自分のやりたいように振る舞おう。
「──へぇ、あそこがね」
と、そんなこんなでドローンを飛ばして場所を探索。
見つけたらその場に転位し、結界を足場に見下ろす──それが現状だ。
見た情報を言語化するならば、そこはもう立派な集落と言えよう。
周囲を隔てる壁も、塀やバリケードと呼ぶものではなく立派な要塞レベル。
中の建物もきちんと整えられており、区画整備までされていた。
中央にはセーブ石が配置されており、そこから休人が今もどこからか現れている。
「で、入り口では厳重な審査が行われているわけだ……えー、そこまでする?」
《すでに旦那様によって、古代箱庭の拠点化が防がれております。以降は古代人たち主導になり、思ったほどの利権は得られなかったのでしょう。外部からの横槍を、徹底して防ぐことを彼らは選びました》
「つまり、俺のせいか…………たぶん、アレがそのまま箱庭に直通する通路だな」
休人たちはよく、河の畔に建てられた施設の中へと入っていく。
出てくる者はほとんどなく、ただ一方的に入るのみ。
その施設内の連中が、集落内の休人たちでも高い実力を持っていた。
死亡レーダーがガンガン……というほどではないが、それなりに強そうなのは居る。
《『プログレス』による事象改変の反応がいくつかございます。転移系は無く、現状の維持が行われているようですね》
「ここからでも分かるのか……うーん、これがやっぱり上手く使えているみたいだな」
箱庭への転移そのものは、管理者が認めてくれれば問題なく可能だ。
休人がどこまで攻略を進めているかは知らないが、できるなら集落は要らんだろう。
そんな情報を把握できるのも、しかも上空から一方的に調べられるのも『SEBAS』がやってくれるから──もちろん、俺が持つアイテムの力もあるけれど。
脱獄時期からよく使っている、固有種の能力を借り受ける遺製具『無形受器』。
それは本来、アイスプルの住民たちの力を借りるためのモノ……だが例外もある。
アイスプルの禁忌が一つ、『SEBAS』と俺が生み出した人造の固有種。
文字通り命の冒涜、そうあれとデザインした彼らの力をそのまま利用している。
「──“抜け目ない盗み見”、さすがは一芸特化ならではの能力だよな」
《一方的な情報収集能力。対【情報王】用に創っておりましたが、『プログレス』相手でも通用しているようで何よりです》
正直、ゲームバランスという概念をEHOにおいて感じたことは無い。
圧倒的な強者、理不尽過ぎる権能……どこまでも広がっていく上と下との格差。
無論、言うまでも無く俺は最下層である。
それでも権限だけ言うならば、俺は最上位にある──それを行使し、限りなく最上位に近く、かつ言うことを聞く存在を創った。
うん、やっていることは間違いなく悪役とか黒幕ポジションではあるが。
まあそんなイカサマを使い、情報収集のプロにメタを張って創ったのがある固有種。
「厳重に防御すればするほど、逆に見通せるようになる……いやまあ、そんな情報戦に特化した能力持ち、普通居ないもんな」
我ながら凄い存在を創ってしまった。
隠そうと考える心理を突いた、逆転の発想である……つまり、大半の機密情報は機密であるがゆえに俺たちが知れてしまうのだ。
「まあ、例外として、この仕組みより更に厳重な秘密とかは無理みたいだけどな……それが実現するのはいつになることやら」
星が隠す秘密はそれに該当しており、いづれは『プログレス』もその域には到達するという計算が『SEBAS』によって出ているそうで──逆もまた然り、だよな?
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誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?
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