虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,392 / 2,853
DIY、冒険を求める(続)

心の歯車

しおりを挟む


 アイスプル 地上

 経験値の謎について、『SEBAS』と少しだけ語り合ってみた。
 結果、暇を持て余すことなく【人形師】系統の職業の常駐化を終えることに成功する。

 あの後、更に強化を行い最大解放まで済ませたところでレベリングは一時中断。
 小休憩を図るため、外に出てまったりとすることに……迷宮内でも陽は昇るけど。

 糸の射程拡張、人形の操作補正、効果発動対象の解釈拡張などなど……いろいろと便利なものはあるのだが、残念なことに獲得経験値効率の向上は存在していない。

 それがあるなら、俺だって常駐化よりも先にそちらを解放している。
 何でもかんでも強化されるわけではない、という何かしらの制約があるのだろう。

「さて、と。今は人形の修繕をして次に備えておかないとな」

 休みというのは俺だけでなく、耐久度を減らした人形たちのためでもあった。
 今回、:DIY:は使用せず【生産勇者】と『巧天』で人形たちに手を加えている。

 また、職業スキルも【整備士】と【高位整備士】に付け替えての実行だ。
 これらの職業能力は本来機械専用だが、元よりソレは彼らに付いている。

「──『プログレス:ハートギア』、これだけは代用できないからな」

《『プログレス』自体は模倣したものをインストールした人形がございますので、問題なく使用可能ですが……》

「そうだな、今まで一件しか確認されていない『プログレス』の能力発現者が死んだってパターンを、俺たちは知らない。『機械皇』とは密にやり取りを続けないとな」

 人形たちが職業に就けているのは、歯車型の『プログレス:ハートギア』のお陰。
 その本来の発現者は、『機械皇』が造り上げた未完成の機械人形──命を宿す人形だ。

 その子以外に『ハートギア』の発現者は居らず、もしその子が死を迎えた場合にどんな影響があるのかを俺たちは知らない──最悪の場合、かなりの痛手になるんだよな。

 少なくとも、インストールや“神持祈祷”で使用した『プログレス』は、休人である俺だと[ログアウト]したときに解除される。

 人形たちにインストールさせたものなら、再度インストールを行わない限り、能力の効果は残り続ける──が、無限に稼働可能かが不明なのは変わらない。

「成長はしてないんだよな……その辺、どうなっているんだ?」

《『機械皇』は魔石を与えていますが、やはり初期でそれだけのことが可能な『プログレス』ですので、かなりの大器晩成型となっていると思われます》

「強い想いはすでに満たしている、それを次に進めるためのエネルギーが全然足りないってことだな」

 あるいは、次に向かうためのトリガーが別のモノになっているのか。
 ……そちらは『機械皇』とあの子の物語なので、俺たちは見守るだけにしよう。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

傍観している方が面白いのになぁ。

志位斗 茂家波
ファンタジー
「エデワール・ミッシャ令嬢!貴方にはさまざな罪があり、この場での婚約破棄と国外追放を言い渡す!」 とある夜会の中で引き起こされた婚約破棄。 その彼らの様子はまるで…… 「茶番というか、喜劇ですね兄さま」 「うん、周囲が皆呆れたような目で見ているからな」  思わず漏らしたその感想は、周囲も一致しているようであった。 これは、そんな馬鹿馬鹿しい婚約破棄現場での、傍観者的な立場で見ていた者たちの語りである。 「帰らずの森のある騒動記」という連載作品に乗っている兄妹でもあります。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

処理中です...