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DIY、監獄ライフに勤しむ
アンヤク 後篇(14)
しおりを挟む星にとって最大の脅威とはナニカ。
自らを脅かす存在である──だがそれは圧倒的な個だけでなく、弱かろうと結果的に滅びをもたらす団塊でもあった。
圧倒的な力が捻じ伏せようとも、それに対抗するための──逸脱した理を秘める者たちが各星々には存在する。
だがそれでも対抗できないとき、これまでのやり方では対処できない異物が現れた──休人、死んでも死なず自らの探求のために自身すらも犠牲とし、目的を果たす死兵たち。
彼ら個人個人は弱くとも、力を束ね挑んだ先に必ず変化が生じる。
星々はそれを良い出来事は考えなかった、だがそれでも座して見守っていた。
──が、『プログレス』がそれを変える。
存在を秘匿し、抹消したはずの願望機。
劣化品と言えど、それが世に広まり誰もが逸脱した理を操るようになった。
星々は重い腰を上げる。
死なぬ体と逸脱した力、二つを併せ持った時点でソレは人知れず始まった──より強力な、狂った力で自らを守ることを選んだ。
「まあ、単純な話ですわよね。どれだけ強くてもたった独りか、どれだけ弱くても無尽蔵に溢れ出るか。貴方がたがいかに強くとも、対処でき数には限りがある……それを補う策として、私たちが選ばれたわけですわ」
「…………」
「【■■■】……ああ、最強の災凶はともかく、大抵の生物は倒せますからね。相性の問題もありますが、星敵は総じて数えれば貴方がたより多いですもの。きっと、世界を救って見せますわ」
「そして、救った世界を滅ぼす、だろう? あの『生者』を討滅した際の星約と違って願いは叶わぬはずだ。叶わぬ以上、星敵がやることなどただ一つ──欲のままに、何を犠牲にしようと動くだけであろう?」
星敵たちは星約に従い、星を脅かすあらゆる存在を屠るだろう。
──それは一切の犠牲を気にせず、また解き放たれた後の振る舞いなど考えずに。
「ええ、もちろん」
そしてそれを、星敵は否定しなかった。
彼らを彼らたらしめるのは、力でも知識でもない──その飽くなき欲望。
休人と違い限りある命でありながら、それでも力を得て欲を叶え続けた。
それはたとえ収容されようと、力で脅されようと──より強い力で捻じ伏せるのみ。
「……聞きたいことは聞けた、礼を言う」
「いえいえ、当代の『騎士王』様のお役立てたようで何よりですわ。これからも、どうか冒険世界をよろしくお願いしますわ」
「…………言うまでもない」
こうして『騎士王』は家屋を去った。
残された【傾界魔王】はただ独り、誰かに語り掛けるように言葉を紡ぐ。
「ふふふっ、いつかその時は必ず訪れることになりますの。私はただ、それを待つだけでいい」
「幸い、ここにはいくらでもございますわ。昔は少々手間でしたが、今はコレがありますもの──ええ、ええ、多少強引だろうと準備はすぐにできますわ」
「だから、待っていてくださいまし。きっとそう遠くないうちに、始まりますわ」
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