虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,377 / 2,809
DIY、監獄ライフに勤しむ

アンヤク 後篇(14)

しおりを挟む


 星にとって最大の脅威とはナニカ。
 自らを脅かす存在である──だがそれは圧倒的な個だけでなく、弱かろうと結果的に滅びをもたらす団塊でもあった。

 圧倒的な力が捻じ伏せようとも、それに対抗するための──逸脱した理を秘める者たちが各星々には存在する。

 だがそれでも対抗できないとき、これまでのやり方では対処できない異物が現れた──休人、死んでも死なず自らの探求のために自身すらも犠牲とし、目的を果たす死兵たち。

 彼ら個人個人は弱くとも、力を束ね挑んだ先に必ず変化が生じる。
 星々はそれを良い出来事は考えなかった、だがそれでも座して見守っていた。

 ──が、『プログレス』がそれを変える。

 存在を秘匿し、抹消したはずの願望機。
 劣化品と言えど、それが世に広まり誰もが逸脱した理を操るようになった。

 星々は重い腰を上げる。
 死なぬ体と逸脱した力、二つを併せ持った時点でソレは人知れず始まった──より強力な、狂った力で自らを守ることを選んだ。

「まあ、単純な話ですわよね。どれだけ強くてもたった独りか、どれだけ弱くても無尽蔵に溢れ出るか。貴方がたがいかに強くとも、対処でき数には限りがある……それを補う策として、私たちが選ばれたわけですわ」

「…………」

「【■■■】……ああ、最強の災凶・・・・・はともかく、大抵の生物は倒せますからね。相性の問題もありますが、星敵は総じて数えれば貴方がたより多いですもの。きっと、世界を救って見せますわ」

「そして、救った世界を滅ぼす、だろう? あの『生者』を討滅した際の星約と違って願いは叶わぬはずだ。叶わぬ以上、星敵がやることなどただ一つ──欲のままに、何を犠牲にしようと動くだけであろう?」

 星敵たちは星約に従い、星を脅かすあらゆる存在を屠るだろう。
 ──それは一切の犠牲を気にせず、また解き放たれた後の振る舞いなど考えずに。

「ええ、もちろん」

 そしてそれを、星敵は否定しなかった。
 彼らを彼らたらしめるのは、力でも知識でもない──その飽くなき欲望。

 休人と違い限りある命でありながら、それでも力を得て欲を叶え続けた。
 それはたとえ収容されようと、力で脅されようと──より強い力で捻じ伏せるのみ。

「……聞きたいことは聞けた、礼を言う」

「いえいえ、当代の『騎士王』様のお役立てたようで何よりですわ。これからも、どうか冒険世界をよろしくお願いしますわ」

「…………言うまでもない」

 こうして『騎士王』は家屋を去った。
 残された【傾界魔王】はただ独り、誰かに語り掛けるように言葉を紡ぐ。

「ふふふっ、いつかその時は必ず訪れることになりますの。私はただ、それを待つだけでいい」

「幸い、ここにはいくらでもございますわ。昔は少々手間でしたが、今はコレがありますもの──ええ、ええ、多少強引だろうと準備はすぐにできますわ」

「だから、待っていてくださいまし。きっとそう遠くないうちに、始まりますわ」

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!

あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!? 資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。 そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。 どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。 「私、ガンバる!」 だったら私は帰してもらえない?ダメ? 聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。 スローライフまでは到達しなかったよ……。 緩いざまああり。 注意 いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ
ファンタジー
 圧倒的な力を持つ公爵家に生まれたアリスには優秀を通り越して天才といわれる6人の兄と姉、ちやほやされる同い年の腹違いの姉がいた。  アリスは彼らと比べられ、蔑まれていた。しかし、彼女は公爵家にふさわしい美貌、頭脳、魔力を持っていた。  ではなぜ周囲は彼女を蔑むのか?                        それは彼女がそう振る舞っていたからに他ならない。そう…彼女は見る目のない人たちを陰で嘲笑うのが趣味だった。  自国の皇太子に婚約破棄され、隣国の王子に嫁ぐことになったアリス。王妃の息子たちは彼女を拒否した為、側室の息子に嫁ぐことになった。  このあつかいに笑みがこぼれるアリス。彼女の行動、趣味は国が変わろうと何も変わらない。  それにしても……なぜ人は見せかけの行動でこうも勘違いできるのだろう。 ※小説家になろうさんで投稿始めました

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

パワハラ騎士団長に追放されたけど、君らが最強だったのは僕が全ステータスを10倍にしてたからだよ。外れスキル《バフ・マスター》で世界最強

こはるんるん
ファンタジー
「アベル、貴様のような軟弱者は、我が栄光の騎士団には不要。追放処分とする!」  騎士団長バランに呼び出された僕――アベルはクビを宣言された。  この世界では8歳になると、女神から特別な能力であるスキルを与えられる。  ボクのスキルは【バフ・マスター】という、他人のステータスを数%アップする力だった。  これを授かった時、外れスキルだと、みんなからバカにされた。  だけど、スキルは使い続けることで、スキルLvが上昇し、強力になっていく。  僕は自分を信じて、8年間、毎日スキルを使い続けた。 「……本当によろしいのですか? 僕のスキルは、バフ(強化)の対象人数3000人に増えただけでなく、効果も全ステータス10倍アップに進化しています。これが無くなってしまえば、大きな戦力ダウンに……」 「アッハッハッハッハッハッハ! 見苦しい言い訳だ! 全ステータス10倍アップだと? バカバカしい。そんな嘘八百を並べ立ててまで、この俺の最強騎士団に残りたいのか!?」  そうして追放された僕であったが――  自分にバフを重ねがけした場合、能力値が100倍にアップすることに気づいた。  その力で、敵国の刺客に襲われた王女様を助けて、新設された魔法騎士団の団長に任命される。    一方で、僕のバフを失ったバラン団長の最強騎士団には暗雲がたれこめていた。 「騎士団が最強だったのは、アベル様のお力があったればこそです!」  これは外れスキル持ちとバカにされ続けた少年が、その力で成り上がって王女に溺愛され、国の英雄となる物語。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

聖女の妹は無能ですが、幸せなので今更代われと言われても困ります!

ユウ
ファンタジー
侯爵令嬢のサーシャは平凡な令嬢だった。 姉は国一番の美女で、才色兼備で聖女と謡われる存在。 対する妹のサーシャは姉とは月スッポンだった。 能力も乏しく、学問の才能もない無能。 侯爵家の出来損ないで社交界でも馬鹿にされ憐れみの視線を向けられ完璧を望む姉にも叱られる日々だった。 人は皆何の才能もない哀れな令嬢と言われるのだが、領地で自由に育ち優しい婚約者とも仲睦まじく過ごしていた。 姉や他人が勝手に憐れんでいるだけでサーシャは実に自由だった。 そんな折姉のジャネットがサーシャを妬むようになり、聖女を変われと言い出すのだが――。

処理中です...