虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

アンヤク 前篇(12)

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「まったく、してやられたものだな……」

 滅亡世界の何所か、未だ休人たちが観測できていない扉の先──迷宮『星層監極』。
 その底にある街の中で、『騎士王』はふと呟く。

 脱獄者の収容は、一人を除き終わった。
 地上を目指す派生迷宮『邪悪深殿』に居たすべての囚人が街に戻され、一部の逸脱した実力者たちもここにやって来ている。

 囚人たちは星敵、形はどうあれ星にとって仇なす者と認識された者たち。
 だがそれだけの実力、技術を有しているのだ──それを知り得る可能性を求めた。

「──貴女が関わっていたのか」

「ふふふっ、私は何もしておりませんわよ。ただ、知恵を授けただけ。アレはとても面白そうな子ですわね、今を生きる人々は驚きの連続でしょうね」

「【傾界魔王】、いや二代目『モルガン』。奴に何を求める?」

 そんな中、『騎士王』が訪れたのは吸血鬼の女性が住まう家屋の中。
 ツクルが【傾界魔王】と呼んだ少女、だが相対する『騎士王』が見る女性は違う。

 少女が成長した、より妖艶な美貌と肢体を持つ女性が足を組んで彼女と話している。
 世界を傾ける魔王、その星敵が有する肩書は決して一つでは無かった。

「『モルガン』、懐かしい名ですわね……冒険世界に居た頃は、『騎士王』を支え、共に世界のために戦いましたわ」

「……『円卓の騎士』の反乱、それを引き起こした張本人がそれを言うか」

「ああ、記憶の継承がありましたわね。ならば、意味のない会話は止めますわね……何を求めるか、でしたわね──何も、求めてはおりわせんわ」

 かつての『騎士王』が経験した問題を思い出し問うが、平然とした口調でサラッと求めた答えのみを告げる【傾界魔王】。

「星敵としての力を扱えるようにしたのも、ただその方があの子が世界に波乱を引き起こしてくれるから。分離には自信がありますもの、経験者はモノを言うというものですわ」

「……『イモータルマスター』だったか。ツクルが使っていたぞ、それは貴女の持つソレなのだろう?」

「あら、使えましたの? 何度か試していたのは分かっておりましたけど、一度も成功はしていなかったのよ?」

「代償が要るのだろう、もっともそれを貴女が支払うとは思わんが」

「ふふっ、正解。嗚呼、面白い力ですわね。昔見た機械仕掛けの獣、アレと似た異質なナニカですわ。あの時は逃してしまいました、それもこれを知ると惜しいことをしたと思いますわ」

 願いの根幹を顕現する『プログレス』。
 その始まりは願望の器にして叶えるための機械、願望機──【傾界魔王】はかつてその存在と相対していた。

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