虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄完了 その05

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 滅亡世界 アンノウン

「……地上だなぁ」

 収容されていた期間はそれなりだったが、苦難を経てとうとう脱獄に成功した。
 空も地上も真っ黒、まさしく滅亡した世界が俺を歓迎する。

「星約によって、脱獄さえ成功すればそれ以上追っ手は出してこないし。とりあえず、しばらくは安泰だな」

 そうせざるを得なかったのか、難易度が高い代わりにクリア後はある程度自由が設けられている……当然だが、再度犯罪を犯せばより難易度が上がった逃走劇になるぞ。

「さて、それにしても監獄は……傍から見て何も無いのと同じなんだよな」

 扉から出たはずの俺だが、周囲には文字通り草木一本生えていない荒野のみ。
 後ろを振り返っても何も存在せず、先ほどまでの出来事がまるで嘘のようだ。

「その辺の考察はおいおいにして。さっそく始めないと──『ゲートコネクター』」

 約束を果たすため、『プログレス』を拝借して起動する。
 空間と空間を繋げられる『プログレス』なのだが、これを生物は通れない。

「登録した座標を繋いで──あーあー、聞こえているか?」

『! この声、【救星者】様!? 途中から映像が見えなかったです!』

「ああ、そうだぞ。というか、そうなっていたのか……」

『はい! お陰で心配で心配で……ご無事で何よりです!』

 同じく空間を生み出す『マイルーム』という『プログレス』、それをアイテムとして準備して固定化した安全な空間。

 そこに待機させていた少女こそ、俺が地上に連れていきたかった存在。
 この滅亡世界をかつて生き、そして死なせてしまった星の意思だ。

「そのことなんだが……まあ、いろいろあって地上に着いた」

『ッ……ということは、そこが』

「ああ、今の光景だ。すぐにこことそこを繋ぐから、準備をしておいてくれ」

『わ、分かりました……』

 少々気落ちしているようだが、あまり長くやっているわけにもいかない。
 これから行うのは少々強引な移動方法なので、早めに済ませたいのだ。

《旦那様、空間の接続に干渉が》

「おっと、不味い──メカトラ、力を貸してくれ」

『ガウッ!』

 外部とのやり取り、ある意味俺と少女との連絡はそう捉えることもできる。
 つまり本来はできないこと、なので防衛機構がそれを阻止しようとするのだ。

 なのでこちらも大慌て、メカトラを呼び出しその姿を鍵に変えてもらう。
 そして空間そのものに対し、勢いよく鍵を突き刺し──右に捻る。

「──『展虎解放』!」

「──わ、通れるようになりました! わわわっ!」

「おっと、危ない危ない。高さの調整をするの忘れてたな。次からは気を付けないと……次もできるか怪しいけど」

「あっ、消えちゃいました……」

 メカトラの力で空間を抉じ開け、生物も通過可能にしたうえで少女に通ってもらう。
 だがそれを行った次の瞬間には、防衛機構によって空間が強引に閉ざされた。

 少なくともこれで、内外を繋いでの脱獄は不可能ということになる。
 ……同じことを考えていたなら、他の脱獄計画者の皆さん、すみませんでした!

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