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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄完了 その03

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 太陽級の爆弾も、核レベルの爆発も、対処してみせた『騎士王』。
 だがあちらも無傷とはいかない、魔術で元に戻しても魔力は確実に減っていく。

「有用なのは理解しました。では、重ねていきます──『核爆槍』」

「愚かな……」

 一つひとつ手に取り、何度も何度も空に向かって投げていく。
 わざわざ一気に落とさず手作業なのは、それだと『騎士王』に干渉されるから。

 投げる際に結界で槍を包むことで、魔力的な干渉を可能な限り阻止できるようにした。
 なお、結界の方で膂力はどうとでもなるので、二刀流ならぬ二槍流での同時投擲だ。

 場所もズラしており、完全な対処ができないタイミングを『SEBAS』が演算して割り出している。

「ッ、厄介なことをするな……!? これ、は……」

「ふふっ、さて何でしょうか?」

 槍に対処していた『騎士王』だったが、突然咳──それも喀血をし、苦渋を浮かべる。
 耐性を無数に持つはずの彼女だからこそ、何が起きたのかと疑念を抱く。

「──回帰は効く……が、すぐに戻る。つまり原因は辺りに残り続けている──この槍が原因だな」

「ええ、その通りです。しかし、除去は極めて困難ですよ? 少なくとも、この状況では特にね!」

 槍を投げ続けることを止めないので、槍から散布される放射線は無限に増え続ける。
 名称から分かる通り『核爆槍』、核エネルギーが爆発する槍は厄災そのものだ。

 俺も同じ状態で、息をするだけで何度も死ぬような状態だ。
 ──槍に仕込んだ『死天』のアイテム、それもあって耐性を貫通して効果を発揮する。

 少しだけフラフラしだした『騎士王』を見て、作戦は有効だったことを確認。
 演技の可能性もあるので、それでも容赦はせず槍を投げ続けた。

「それそのものを防ぐのはできない。ならば我自身を、この毒そのものから逃れるようにすれば──これで良いか」

「さすがは『騎士王』様、理屈は分からずとも防ぎますか……ええ、肉体の反応を抑えられれば時間は稼げますね」

「これが『生者』の世界の毒か……まだ、耐性は適合せぬな」

「不可能ではありませんが、極めて難しいでしょうね。それにしても、こうもあっさり対処されるのは辛いです。槍の爆発、こちらもそれなりに危ういものなのですがね」

 槍に込められた放射能、それは科学毒として状態異常扱いになる。
 毒耐性があればほんの少しだけ抑えられるが、今回のソレは強化版だ。

 さすがの『騎士王』も耐性獲得に時間を掛けているようだ……それでもだんだんと体を慣らし、槍そのものへの対処も上手くなっているのが本当に怖いところである。

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