上 下
2,364 / 2,721
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄完了 その02

しおりを挟む


 星鑓を構えた『騎士王』は、武技名を告げて宙に向けて鑓を穿った。
 そこにあるのは『恒星能爆弾』、太陽の如きエネルギーを秘めた爆弾が炸裂する。

「くっ……」

 衝撃波が飛んでくる一瞬前、『騎士王』が魔術で身を固めているのは確認した。
 対する俺は何もせず、ただ身を委ねて自ら死を招く──痛みは一瞬、何も感じない。

 痛覚機能は正常に働いている、だがそれ以上に起きている事象が異常なのだ。
 肉体を磨り潰し、焼き焦がし、塵すら残さぬレベルで発火する。

 爆弾が宙で炸裂してこのレベル、地表に落ちていれば結果も変わっていただろう。
 しばらくして、感覚が戻った俺が辺りを見渡せば──

「……おや、さすがの『騎士王』様でも限界はあるのですね。ええ、これは本当に驚きました」

「…………我は、人であるからな。無傷の貴公とは違うのだ」

「と言いつつ、回復の術式ですぐに治している貴方様も、大抵一般人とは程遠いとは思いますがね」

 さすがに太陽級のエネルギーの爆弾は堪えたのか、ダメージを負っていた『騎士王』。
 焼き爛れた右腕と両足、輝きを失った装備品などこれまでと違う点が見られる。

 だがそれも、残された左腕で文字を描くと変化が起きた。
 時を巻き戻すように腕と足が治り、それまで通りの白い肌となる。

 鎧などの装備はそのままだが、それでも充分だろう。
 彼女から感じ取れる魔力の総量は、明らかに減っていた……それが限界なのだ。

「時を戻す術式、さすがに『騎士王』と言えども負担が掛かるもののようですね。まあ、物凄い勢いで回復しているのもまた、恐ろしいところではありますが」

「時間は我の武器だ……危険性も理解した、早々に蹴りを付けねばなるまいな」

「いえいえ、もっと楽しみましょう。せっかく封印を解いたのです、やれることはどこまでもね──『核爆槍』!」

 俺の手にすっぽり収まる形で、空間を割いて槍が現れる。
 重力操作が組み込まれた軽い槍を、俺は槍投げの要領で空に向かって投げた。

 先ほど同様に術式を編む『騎士王』、今回はしっかりと捉えたソレは俺がかつて貰った術式『完星璧盾』に似た球体状の結界。

 肉体操作によって完璧な形で『騎士王』の頭上へ落ちた槍は、結界にぶつかり──再び炸裂、先ほどと違うのは槍の先端に莫大なエネルギーが収束していること。

「ッ……!」

「おっと、これはいけない」

 結界に罅が入り、熱はたしかに『騎士王』にダメージを与えているはず。
 だがそれでも、巧みに結界を操作して槍の爆発が俺にも及ぶようにした。

 俺に通じずとも、足止めできるし自分が負う負担が減る。
 一挙両得、二兎をも得ずとならない、さすがは『騎士王』だな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

【完結】私だけが知らない

綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...