2,364 / 2,752
DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄完了 その02
しおりを挟む星鑓を構えた『騎士王』は、武技名を告げて宙に向けて鑓を穿った。
そこにあるのは『恒星能爆弾』、太陽の如きエネルギーを秘めた爆弾が炸裂する。
「くっ……」
衝撃波が飛んでくる一瞬前、『騎士王』が魔術で身を固めているのは確認した。
対する俺は何もせず、ただ身を委ねて自ら死を招く──痛みは一瞬、何も感じない。
痛覚機能は正常に働いている、だがそれ以上に起きている事象が異常なのだ。
肉体を磨り潰し、焼き焦がし、塵すら残さぬレベルで発火する。
爆弾が宙で炸裂してこのレベル、地表に落ちていれば結果も変わっていただろう。
しばらくして、感覚が戻った俺が辺りを見渡せば──
「……おや、さすがの『騎士王』様でも限界はあるのですね。ええ、これは本当に驚きました」
「…………我は、人であるからな。無傷の貴公とは違うのだ」
「と言いつつ、回復の術式ですぐに治している貴方様も、大抵一般人とは程遠いとは思いますがね」
さすがに太陽級のエネルギーの爆弾は堪えたのか、ダメージを負っていた『騎士王』。
焼き爛れた右腕と両足、輝きを失った装備品などこれまでと違う点が見られる。
だがそれも、残された左腕で文字を描くと変化が起きた。
時を巻き戻すように腕と足が治り、それまで通りの白い肌となる。
鎧などの装備はそのままだが、それでも充分だろう。
彼女から感じ取れる魔力の総量は、明らかに減っていた……それが限界なのだ。
「時を戻す術式、さすがに『騎士王』と言えども負担が掛かるもののようですね。まあ、物凄い勢いで回復しているのもまた、恐ろしいところではありますが」
「時間は我の武器だ……危険性も理解した、早々に蹴りを付けねばなるまいな」
「いえいえ、もっと楽しみましょう。せっかく封印を解いたのです、やれることはどこまでもね──『核爆槍』!」
俺の手にすっぽり収まる形で、空間を割いて槍が現れる。
重力操作が組み込まれた軽い槍を、俺は槍投げの要領で空に向かって投げた。
先ほど同様に術式を編む『騎士王』、今回はしっかりと捉えたソレは俺がかつて貰った術式『完星璧盾』に似た球体状の結界。
肉体操作によって完璧な形で『騎士王』の頭上へ落ちた槍は、結界にぶつかり──再び炸裂、先ほどと違うのは槍の先端に莫大なエネルギーが収束していること。
「ッ……!」
「おっと、これはいけない」
結界に罅が入り、熱はたしかに『騎士王』にダメージを与えているはず。
だがそれでも、巧みに結界を操作して槍の爆発が俺にも及ぶようにした。
俺に通じずとも、足止めできるし自分が負う負担が減る。
一挙両得、二兎をも得ずとならない、さすがは『騎士王』だな。
0
お気に入りに追加
645
あなたにおすすめの小説
催眠術師は眠りたい ~洗脳されなかった俺は、クラスメイトを見捨ててまったりします~
山田 武
ファンタジー
テンプレのように異世界にクラスごと召喚された主人公──イム。
与えられた力は面倒臭がりな彼に合った能力──睡眠に関するもの……そして催眠魔法。
そんな力を使いこなし、のらりくらりと異世界を生きていく。
「──誰か、養ってくれない?」
この物語は催眠の力をR18指定……ではなく自身の自堕落ライフのために使う、一人の少年の引き籠もり譚。
異世界行ったらステータス最弱の上にジョブが謎過ぎたからスローライフ隠居してたはずなのに、気づいたらヤバいことになってた
カホ
ファンタジー
タイトル通りに進む予定です。
キャッチコピー
「チートはもうお腹いっぱいです」
ちょっと今まで投稿した作品を整理しようと思ってます。今読んでくださっている方、これから読もうとしていらっしゃる方、ご指摘があればどなたでも感想をください!参考にします!
注)感想のネタバレ処理をしていません。感想を読まれる方は十分気をつけてください(ギャフン
神速の冒険者〜ステータス素早さ全振りで無双する〜
FREE
ファンタジー
Glavo kaj Magio
通称、【GKM】
これは日本が初めて開発したフルダイブ型のVRMMORPGだ。
世界最大規模の世界、正確な動作、どれを取ってもトップレベルのゲームである。
その中でも圧倒的人気な理由がステータスを自分で決めれるところだ。
この物語の主人公[速水 光]は陸上部のエースだったが車との交通事故により引退を余儀なくされる。
その時このゲームと出会い、ステータスがモノを言うこの世界で【素早さ】に全てのポイントを使うことを決心する…
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
最悪のゴミスキルと断言されたジョブとスキルばかり山盛りから始めるVRMMO
無謀突撃娘
ファンタジー
始めまして、僕は西園寺薫。
名前は凄く女の子なんだけど男です。とある私立の学校に通っています。容姿や行動がすごく女の子でよく間違えられるんだけどさほど気にしてないかな。
小説を読むことと手芸が得意です。あとは料理を少々出来るぐらい。
特徴?う~ん、生まれた日にちがものすごい運気の良い星ってぐらいかな。
姉二人が最新のVRMMOとか言うのを話題に出してきたんだ。
ゲームなんてしたこともなく説明書もチンプンカンプンで何も分からなかったけど「何でも出来る、何でもなれる」という宣伝文句とゲーム実況を見て始めることにしたんだ。
スキルなどはβ版の時に最悪スキルゴミスキルと認知されているスキルばかりです、今のゲームでは普通ぐらいの認知はされていると思いますがこの小説の中ではゴミにしかならない無用スキルとして認知されいます。
そのあたりのことを理解して読んでいただけると幸いです。
Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる