126 / 2,826
DIY、冒険を求める
貢献イベント その25
しおりを挟む「……えっと、どうしてこんなことになっているんでしょうか?」
「必要のない質問をする意味は、無いと思うのだがね」
「そろそろ覚悟を決めろよ」
「ま、まだ心の準備が……」
さて、状況を説明しよう。
魔物を掃討したことによって生まれた広い荒地帯。
そんな所でエルフの隠れ里の戦士たちが、俺と里長兄弟を取り囲むように円を描いて立ち並んでいる。
俺と相対するように立っている二人は、何故か武器を俺に向けるようにして構えを取っていた。
……まあ、理由は分かっているさ。
里長兄弟を無理やり眠らせて放置し、魔物たちと里にそれぞれ結界を張って、結局俺独りですべてを終わらせたからだ。
少なくとも日々の間に、里長(弟)の方が戦闘狂であることは把握している。
だからこそ、魔物の報告をした時も小さく口角を上げてたんだよな~。
それでも、俺の目的のためには彼にも眠ってもらわないとならなかった。
──そして、せっかく里に戻ったのに、Uターンさせられたんだよ。
ただい、と言った瞬間にラリアットの要領で吹っ飛ばされ、それ以降は首根っこを捕まれてこの場所まで引き摺られた。
……俺の悲鳴はまー! だったよ。
「準備はいいよな? お前は散々魔物と遊び尽くしたんだからよ。とりあえず十回は殺して、体を温めるぞ」
すでに俺を殺しまくっているはずだが……どうやら、まだ物足りないようです。
「…………や、優しくしてくださいね」
「ええ、優しくしますよ──君が弟を満足させましたら」
それ、もう無理ゲー!
放たれた威圧で一度死にながら、俺はそう心の中でツッコんだ。
◆ □ ◆ □ ◆
そして数日後、俺は里の入り口にいた。
「……今日で、私は帰ります。短い間でしたが、お世話になりました!」
イベント終了の時刻は24時間を切っており、何もせずともこのままではこのエリアから強制的に排除されてしまう。
俺が突然消えても、もちろんエルフの隠れ里は回っていく。
それでもさよならだけは言っておきたかったので、こうして別れを告げるのだ。
────────
……でも、まさか誰も送迎のために集まってくれないとは、思ってもいなかった。
里はいつもの賑わいを見せているが、俺の元にそんなものは何もない。
ただ、俺のセリフが空気に流されて何処かに飛んでいくだけだ。
「……さて、帰るか」
心が折れそうになるが、それでも諦めずに足を動かしていく。
森を抜けるための方法は、この滞在期間中に習っていた。
なので案内人も必要なく、本当に独りでのご帰還ですよ……ハァ。
森を歩き、霧を抜け、スリュと出会った湖に出る──。
「ッ……! ハハッ。まったく、こんなサプライズをしているなんてな」
湖に広がる光景は、行きに来た時とまったく異なるモノが目立っていた。
えっ、それがいったい何かって?
「答えは『ワァアアアアア!』……みんな、本当にありがとう!!」
──俺の応えが答えだよ。
21
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

なんでもアリな異世界は、なんだか楽しそうです!!
日向ぼっこ
ファンタジー
「異世界転生してみないか?」
見覚えのない部屋の中で神を自称する男は話を続ける。
神の暇つぶしに付き合う代わりに異世界チートしてみないか? ってことだよと。
特に悩むこともなくその話を受け入れたクロムは広大な草原の中で目を覚ます。
突如襲い掛かる魔物の群れに対してとっさに突き出した両手より光が輝き、この世界で生き抜くための力を自覚することとなる。
なんでもアリの世界として創造されたこの世界にて、様々な体験をすることとなる。
・魔物に襲われている女の子との出会い
・勇者との出会い
・魔王との出会い
・他の転生者との出会い
・波長の合う仲間との出会い etc.......
チート能力を駆使して異世界生活を楽しむ中、この世界の<異常性>に直面することとなる。
その時クロムは何を想い、何をするのか……
このお話は全てのキッカケとなった創造神の一言から始まることになる……

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

私はいけにえ
七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」
ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。
私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。
****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

World of Fantasia
神代 コウ
ファンタジー
ゲームでファンタジーをするのではなく、人がファンタジーできる世界、それがWorld of Fantasia(ワールド オブ ファンタジア)通称WoF。
世界のアクティブユーザー数が3000万人を超える人気VR MMO RPG。
圧倒的な自由度と多彩なクラス、そして成長し続けるNPC達のAI技術。
そこにはまるでファンタジーの世界で、新たな人生を送っているかのような感覚にすらなる魅力がある。
現実の世界で迷い・躓き・無駄な時間を過ごしてきた慎(しん)はゲーム中、あるバグに遭遇し気絶してしまう。彼はゲームの世界と現実の世界を行き来できるようになっていた。
2つの世界を行き来できる人物を狙う者。現実の世界に現れるゲームのモンスター。
世界的人気作WoFに起きている問題を探る、ユーザー達のファンタジア、ここに開演。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。
だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。
十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。
ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。
元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。
そして更に二年、とうとうその日が来た……

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~
山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」
母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。
愛人宅に住み屋敷に帰らない父。
生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。
私には母の言葉が理解出来なかった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる