上 下
125 / 2,721
DIY、冒険を求める

貢献イベント その24

しおりを挟む


「──さて、残ったのは貴方だけですよ」

 魔物たちの軍勢を払い続け、ついに残った魔物は一体のみとなった。

 俺の足元……いや、周囲には魔物の残骸が至る所に散らばっている。
 もがき苦しむような表情を浮かべた者や、全身が真っ黒焦げになった者、体をバラバラにされた者など、そのすべてを同じ方法で倒したわけではない。

 あのままメスだけ使って勝ち、というのが俺のベストだったんだが、やはり奥に進みにつれてメスがポキポキ折れて逝ってな……もうメスの予備も尽きた。
 自動修復機能があるから、明日には全部元通りなんだけど、今ストックが尽きたことに変わりはない。

 そして、目の前の魔物に苦戦させられるんだろうなー、と思ってます。

「……ふっ、貴様が奴らの切り札となる新たな『超越者』であることは分かっている。それでもなお、こちらがすべての魔物を使ったことに、違和感を感じなかったのか?」

「『超越者』に、人の技術や獣の本能で勝てるとお思いで? 人智を超えた存在だからこそ、貴方のような人型の魔物などでは及ぶことなどありえません」

「……魔物、だと。この私が……魔物?」

 魔物、という単語を告げると、目の前の魔物はプルプルと拳を強く握り締めながらこう言ってきた。

「おや、違ってましたか? あまりに浅はかな方でしたので、てっきり魔物が人になれるだけの存在かと」

「……貴様、殺されたいのか」

 凄まじい殺気を放ってくるが、今さらというかなんというか……気にせず笑う。

「貴方も見ていたのでしょう? 私を殺し切ることは絶対にできませんよ。どうやっても死なない呪いのような力の持ち主、それがこの私なのですから」

「……フッ。何も肉体を傷付けるだけが、貴様を死に追いやる方法では無い。やり方ならいくつかある……味わうか?」

「いえ、遠慮しておきますよ」

 そう言いつつ、ポケットの中からある物を取りだしておく。
 たぶんコイツは、俺を封殺する術をこの戦いの中で見つけたのだろう。

 だいたいのことは後からでも対処できるのだが、そこに含まれないことをされたら厄介である。

 ──さっさと終わらせるに、越したことはないんだ。

「早めに決着をつけませんと、互いに面倒なことになるでしょうし……どうでしょう? 一先ずここで、手打ちにするというのは」

 こう、素晴らしいアイデアを提案する。
 実に簡単、引き分け宣言だった。

「……貴様、ここまでしておいてそれが通じるとでも?」

「ええ、貴方はかなりやり手のように見えますし。ここで私が命を奪わない限り、貴方は必ず上に登り詰めるでしょう」

「…………それで、もし撤退したならば、こちらの利となることはなんなんだ?」

「それはですね──」

 俺の提案することに、目の前の奴は熟考した後──受け入れて撤退した。

 この場に残ったのは魔物の骸のみ。

「……とりあえず、素材を回収しようか」

 俺がエルフの隠れ里に戻るのは、数時間後のことである。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

処理中です...