124 / 2,811
DIY、冒険を求める
貢献イベント その23
しおりを挟むツクルは、複数の加護を授かっている。
プレイヤーの中にも、ツクル以上の数の加護を持つ者はいるのでそう珍しくはない。
……だが、その加護を与えた存在が、かなり貴重であった。
「ツクル君のバトルモード! いつもの手抜きとは違って、エキサイティングだねー」
「……ツクルめ。仕事が増えることを」
エルフの森とは違うどこか、何もない空間で、その存在たちはツクルの戦いを覗く。
どちらにもノイズのような靄が掛かり、その正体を見ることはできない。
だが、その存在感が彼らがどういった存在であるかどうかを体に教えてくれる。
──『神』、それが彼らであると。
彼らは創造神と死神。
かつてツクルに祝福を与えた二柱だ。
「良いじゃないかい。最近は信仰も増えてきているんだろう? 死に戻りって概念そのものが、君に関係あるんだからさ」
「それとこれとは別であろう。アヤツの刃は因果改変の力。使えば使う程、本人にその対価が求められるものではないか」
「──本来は、だけどね」
空中に投影された映像内でツクルは、八本の『死神の短剣』を器用に動かし、目の前を遮る魔物を切り裂き続けていた。
抗おうともツクルは貧弱、止めようとすれば死の爆弾が解き放たれる。
触れた魔物はすべて即死、それが今までの結果であった。
「僕と君の加護が働けば、そんな小さなことは気にならない。そうだよね?」
「だからこそ、気を配るべきなのだ。さすがに他の者を抑え辛くなっている。現に精霊神も接触しているだろう」
「あー、あのロリババアね。自分の領域にツクル君が来たからって、まさか精霊魔法を授けようとするなんて、誰が予想できるのさ」
ツクルに接触しようとする神、それは少なからず存在した。
創造神と死神が目を付けた、それだけでそうするに価する存在なのだ。
「アヤツの虚弱さ故に防げたものの、いつ面倒な奴らが介入しようとするか……」
「他のプレイヤーにも面白い子は沢山いるけど、ツクル君は輪を掛けて愉快だからね~。みんながみんな、ツクル君で遊ぼうとするのは……ちょっと邪魔かな?」
そう言った創造神からは、笑みが失われていた。
本性を晒す姿にため息を吐く死神、そして再び笑顔になる創造神。
「まあその内、そっちに関しては手を付けるとして……今回のイベント、どうしてエルフの森にも侵攻しているの?」
「たしかに、ツクル一人では条件を満たすことは無かったはず」
ツクルは自身が居るからこそ、エルフの里に魔物が攻め入ったと思ったが……それは間違いであった。
本来の条件は、各種族の居住エリアに一度でも入ったプレイヤーのスキルLvの合計値が、最低でも100を超えることであった。
「ツクル君はこのイベント中、ドワーフの所にも行っていたはず。だけど実際に魔物の侵攻がされたのは、ツクル君の居るエルフの場所だけ……うん、おかしいね」
「……仕方がない、探すか」
死神はどこからか巨大な鎌を取りだし──何もない場所を切り裂く。
すると、そこに裂け目が現れる。
マーブル色の空間がその場に広がり、死神はそこに足を踏み入れた。
「私は先に行って探しておく。お前も周りを抑えてからこっちに来い」
「え~、ツクル君はー?」
「……録画しておけ。私もあとで観る」
「了解! ──それじゃあ頼んだよ」
創造神と死神、二人がこの場から消える。
そこに残されたのは、今まで空気と同化していた一柱の少女だけであった。
21
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。

我が家に子犬がやって来た!
もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。
アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。
だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。
この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。
※全102話で完結済。
★『小説家になろう』でも読めます★

あなたがそう望んだから
まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」
思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。
確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。
喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。
○○○○○○○○○○
誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*)
何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【完結】精霊に選ばれなかった私は…
まりぃべる
ファンタジー
ここダロックフェイ国では、5歳になると精霊の森へ行く。精霊に選んでもらえれば、将来有望だ。
しかし、キャロル=マフェソン辺境伯爵令嬢は、精霊に選んでもらえなかった。
選ばれた者は、王立学院で将来国の為になるべく通う。
選ばれなかった者は、教会の学校で一般教養を学ぶ。
貴族なら、より高い地位を狙うのがステータスであるが…?
☆世界観は、緩いですのでそこのところご理解のうえ、お読み下さるとありがたいです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる