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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その29
しおりを挟むあの手この手の小細工の果て、内包しているエネルギーによる自爆を図った。
俺も『騎士王』も、そしてメカドラも全員纏めてそれを浴びる。
「──甘い」
だというのに、『騎士王』は立っていた。
さすがに無傷とはいかなかったようで、装備はボロボロだしダメージが至る所に傷という形で刻まれている。
それでも、何事もなかったかのように平然と立つその姿はやはり最高の『超越者』と呼ばれるに相応しいものだった。
「心臓が無くとも生きられるのか……いったいどうすれば、貴公は死ぬのだろうな」
「人に忘れられたとき、ですかね?」
「……ならば無理なのだろうな、貴公のこれまでは我らに充分過ぎるまでに己を刻んでいたのだ。だが安心しろ、それでも貴公は人の身。死という因果からは逃れられぬ」
寿命ならともかく、数値として生命力が存在する世界で死なないというのは難しい。
すでに心臓は先ほどのアレで消滅し、今も俺の心臓は空っぽだ。
それでも動いていられるのは、『生者』の頃から有していた[称号]セットの権能。
それによって常時効果を発動する、死後の活動が許される『死兵』。
決して長くはない、だがそれでもゼロではない時間で俺は奇跡を魅せる。
「──さて、ここに取り出すのはただのポーションです。何の変哲もない、強いて挙げるならば私が自作した代物です」
「ッ……!」
「メカドラ」
『ギャウウ!』
俺が[インベントリ]から取り出したポーションから、すべてを察したのだろう。
すぐさま破壊に移ろうとする『騎士王』だが、それを阻むように動くメカドラ。
本来、星を相手取ることができるのが彼ら願望機の戦闘スペックなのだ。
相手が相手なので圧倒は無理でも、ほんの数秒なら足掻いて稼ぐことができる。
「そして、このポーションを文字通り胸に空いた穴に垂らしますと──」
「……訂正しよう、人の身からは逸脱していたな」
「──御覧の通りあら不思議、穴は塞がり心臓も新たに動き出すようになりました!」
俺が使ったのは蘇生薬、この世界で最上級の回復ポーション。
結果、部位欠損扱いされる心臓は元の状態に戻り、血を巡らせていく。
本来であれば、それだけで死という因果から逃れることはできない。
現実でも、死んだ後にどうにかしても手は打てない……なぜなら死んでいるのだから。
それでもこちらでは、システムという絶対の理が生存を保証してくれる。
心臓が脈打った俺のHPは1、部位欠損という生命力の減少する理由も失われた。
「心臓が鼓動を刻む限り、私は死にません。さて、どうしますか?」
「どうする、とは? 我は降伏せぬし、貴公も諦めるつもりは無い。ならば、やることは変わらない──だがそうだな、場所を変えようか。ここでは影響が出そうだ」
「……ええ。どうぞご自由に」
逃れることはできない、『騎士王』の転移は俺を含める形で発動している。
死なないのと勝てるのは同義ではない、勝つための手段はまた別で用意するのだ。
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誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
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