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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その28
しおりを挟む小細工を止め、メカドラ着装と共に真っ向から挑んだ接近戦。
だが、『騎士王』は嘆息混じりに鑓を放って──俺の心臓を穿った。
「星敵としての核、見定めさせてもらった。心臓なのだろう? 貴公の今の弱点は」
「……」
「『生者』であったならば、それでも動いていただろう。『超越生者』もまた、同じこと自体は可能とは思う。だが、それは核ありきの事象となってしまった。自ら弱くなったのだよ、貴公は」
推測を──否、文字通り俺の権能に記された情報を見たかのように語る『騎士王』。
核さえ無ければ死んでしまう、明確な弱点が生まれてしまったのだ。
「さて、あとは心臓を封印すれば……」
「終わり、ねぇ……」
「…………不正解だったか?」
「いいや、正解だぞ。心臓が核、俺の今の権能は心臓を媒介として発動しているし。ああそうだ、正解なんだ──まあもっとも、俺自身の終わりとは、また別の話なんだがな」
「ッ!?」
手始めに[称号:『人間爆弾』]が起動。
起爆したのは心臓、星敵としての膨大なエネルギーの爆発ともなれば、『騎士王』だろうと簡単には防ぐことはできない。
鑓に刺し貫かれていた俺は、心臓を振り払うためにそのまま薙ぎ払われる。
俺だけだったならば、抗うこともできないで飛ばされていたのだろうが──
「メカドラ、頼むぞ」
『ギャウ!』
「くっ、厄介な……!」
「おまけにそいっ!」
「──!」
俺が装備していた鎧となっていたメカドラが変形し、鑓に食い込んだ。
強引に処理しようと一瞬していたが、そのほんの数秒の時間を稼いでくれる。
俺はその間にボタンを取り出し、すぐさま押して効果を発揮。
瞬間、俺と『騎士王』の周囲に特殊な空間が生み出される。
──『沈黙のボタン』。
本来は空気を無くし、窒息死させるための[死天]謹製のアイテム。
それを加工し、そこから派生させることで成し得た──技の起動を封じる力場の生成。
結果的に、『騎士王』のような完全無詠唱ができる連中でも技が使えなくなる。
沈黙は一種の状態異常、耐性を無視できる[死天]の厄介さを引き継いだアイテムだ。
ただし、対『騎士王』レベルの代物はほんの数秒しか持たない。
改造、改変のため死そのものから少々外れているための劣化だ。
(それで充分、まずは一撃だ)
俺、メカドラ、そして『騎士王』は仲良くエネルギーの爆発を浴びる。
星敵のエネルギー、そのほぼすべてが注がれた心臓の爆発は凄まじく、迷宮を揺らす。
結果、この階層の何もかもがその影響を受けて──
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