虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄遂行 その26

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 不死の軍勢は『騎士王』によって処理されてしまった。
 ここからは再び個人戦……命を燃やし、接近戦を行う。

「“孤独蟲どくっ!? ……『星域』展開、“星辰精意”」

「術式は無効化させてもらうぞ……後者は、どうとでもなる」

 近づきながら起動したのは、死ねば死ぬほど能力値が上がる術式と、一定時間経過で相手を弱体化させる職業能力。

 そのうち、前者は『騎士王』自身が開発者ということもあり無力化される……いちおう改良し、簡単には妨害されないようにしていたのだがな。

 後者についても、『騎士王』が星剣で何かしたのかすぐに意味を成さなくなった。
 ただし、地面に突き刺す必要があるらしく代わりに使えなくなる。

 先ほども鑓で薙いではいたが、その後はすぐに剣に戻していた。
 だが今回は剣を完全に手放し、しっかりと鑓を構えている。

「おや、鑓に替えますか?」

「貴公のせいでな。武器を替えさせたところで、結果は変わらぬが」

 すぐに『SEBAS』が解析したところ、星剣が冒険世界としての領域を展開して、アイスプルの領域を中和しているらしい。

 あちらの優位性を封じている……というわけでもないのが現状だ。
 すでにこの場は星々の管理下、『騎士王』が万全に戦える場が整っている。

 鑓を振るう『騎士王』へ果敢に攻撃を仕掛けるが、その効果は芳しくない。
 死ねば死ぬほど増える固定ダメージ、だがそれは瞬時に再生され意味を成さなくなる。

 装備している最高級の鎧だけでそうだ。
 事あるごとに『騎士王』相手に売り捌いていたポーションを使えば、更に通じない。

 それでも繰り返すのは、今の俺の体であれば生命力がそれなりに存在するから。
 普段であれば1ずつ重ねる必要がある数値も、今だけは一回死ぬごとに五桁は増える。

 これもまた、本来の持ち主であれば想定されていなかったバグ技。
 回復されようと、ダメージだけは蓄積していく……現に彼女は火傷を負っていた。

「──火力が上がってきたか。そろそろ耐性も強化していこう」

 まあ、すぐに元の状況に戻されたけど。
 しかし、時間さえ掛ければ再び逆転する余地はあるだろう。
 問題はそんな時間、どこにも無いこと。

《旦那様、星剣を介し星々による干渉が行われています。また、『騎士王』を軛として、この場からの移動がいっさいできない仕様となっています》

「……[ログアウト]は?」

《そちらに不備はございませんが、街の方に封印される形になるでしょう》

 ここで負ければ、そうなるというわけだ。
 時間を掛ければ掛けるほど、俺にできることがどんどん減っていく。

「せめて、こちらでは有利に進めたかったのですが……甘い見越しでした」

「我が負けるわけにはいかないのでな」

 動きはすべて『SEBAS』が学習しているが、手の内を隠したうえでこちらを翻弄してくる『騎士王』。

 お陰で解析をどれだけ進めても、まったく異なる手段によって意味を無くしてしまう。
 術式はほとんど『騎士王』からの貰いものだから通じず、有効的な道具も無い。

 ──圧倒的な格差、それを前に俺は追い詰められていくのだった。

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