2,354 / 2,823
DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その22
しおりを挟む術式対決はあっさりと負ける。
名も知らぬ【賢者】の模倣は、俺が作った長杖を振るった『騎士王』により相殺以上に迫られる形で潰えた。
「武術で挑んでも同じことでしょうし……剣と鑓、どちらでも勝てそうにないですね」
「今回は剣を使う。それこそが、星からの指令でもある」
「……そうですか、それはそれで」
死に続けるんだろうな。
星剣、正式名『騎賜星剣[アーサー]』。
読んで字の如く『騎士王』専用武装で、冒険世界が保有するもう一振りの星の剣だ。
前に一度その能力について、当の本人から聞いたことがある。
基本的には異端の存在にのみ振るわれ、普段使いはめったにしないような代物だ。
「とはいえ、剣の能力は使わぬ。あくまで、この剣を使うという事実が重要なのだ」
「……それはそれは、大変喜ばしいお言葉を賜れました。さすがに、十数人を相手にするのは少々厳しいものでしたので」
「すでにここに来る過程で、それだけのことは経験しているはずだが?」
「ええ、そこはまあ知恵……というより、皆様との友情の力で」
星剣の厄介な点、その一つはいついかなる時でも必要とあらば『円卓の騎士』の連中を呼び出すことができること。
星の理が働いている以上、同等の力で押さえつけなければ阻止はできない。
要するに、星の恩恵を持たない相手であればほぼ確実に無双できるわけだ。
だが、今回は使わないとのこと。
領土以外の場所では、召喚もノーコストではなくそれなりに出費が痛いのだろう。
あと、シンプルに使う必要が無いからか。
「どのようにお考えなのでしょうね、星は」
「それは我には与り知らぬことだ。しかしこの剣を使う以上、敗北は許されない」
「……これ以上の時間稼ぎは無理ですか。仕方ありませんね」
そう言って、整えていた準備を目に見える形で示す。
仮面を付けていた俺、その体はエクリのものであり、今は【魔王】を再現している。
そしてその【魔王】は、ドッペルゲンガーの【魔王】だ。
体は更に変貌し、異なるものへ──まさに目の前に居る女性と瓜二つに。
「我を模するか」
「無論、このままでは贋作が負けてしまいますので──このように」
部分的な模倣、それにより『騎士王』に変化していた体のうち、右腕だけを更新。
形だけ、本当の意味で効果を発揮していなかった宝石が、異なる太さの腕で輝き出す。
「今だけは、裏技ですが使えるようになりますので……」
「! それは、いったい」
「ええ、答え合わせをしましょうか! これこそが『プログレス』の極致ですよ! ──『イモータルマスター』!!」
マスター系の『プログレス』、それは俺やエクリでも模倣できない。
だがそれが今、宝石から稼働し力を発揮しつつある……まあ、絡繰りは簡単だぞ。
0
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

何でも奪っていく妹が森まで押しかけてきた ~今更私の言ったことを理解しても、もう遅い~
秋鷺 照
ファンタジー
「お姉さま、それちょうだい!」
妹のアリアにそう言われ奪われ続け、果ては婚約者まで奪われたロメリアは、首でも吊ろうかと思いながら森の奥深くへ歩いて行く。そうしてたどり着いてしまった森の深層には屋敷があった。
ロメリアは屋敷の主に見初められ、捕らえられてしまう。
どうやって逃げ出そう……悩んでいるところに、妹が押しかけてきた。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

もしかして寝てる間にざまぁしました?
ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。
内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。
しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。
私、寝てる間に何かしました?

Free Emblem On-line
ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。
VRMMO『Free Emblem Online』
通称『F.E.O』
自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。
ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。
そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。
なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる