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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その22
しおりを挟む術式対決はあっさりと負ける。
名も知らぬ【賢者】の模倣は、俺が作った長杖を振るった『騎士王』により相殺以上に迫られる形で潰えた。
「武術で挑んでも同じことでしょうし……剣と鑓、どちらでも勝てそうにないですね」
「今回は剣を使う。それこそが、星からの指令でもある」
「……そうですか、それはそれで」
死に続けるんだろうな。
星剣、正式名『騎賜星剣[アーサー]』。
読んで字の如く『騎士王』専用武装で、冒険世界が保有するもう一振りの星の剣だ。
前に一度その能力について、当の本人から聞いたことがある。
基本的には異端の存在にのみ振るわれ、普段使いはめったにしないような代物だ。
「とはいえ、剣の能力は使わぬ。あくまで、この剣を使うという事実が重要なのだ」
「……それはそれは、大変喜ばしいお言葉を賜れました。さすがに、十数人を相手にするのは少々厳しいものでしたので」
「すでにここに来る過程で、それだけのことは経験しているはずだが?」
「ええ、そこはまあ知恵……というより、皆様との友情の力で」
星剣の厄介な点、その一つはいついかなる時でも必要とあらば『円卓の騎士』の連中を呼び出すことができること。
星の理が働いている以上、同等の力で押さえつけなければ阻止はできない。
要するに、星の恩恵を持たない相手であればほぼ確実に無双できるわけだ。
だが、今回は使わないとのこと。
領土以外の場所では、召喚もノーコストではなくそれなりに出費が痛いのだろう。
あと、シンプルに使う必要が無いからか。
「どのようにお考えなのでしょうね、星は」
「それは我には与り知らぬことだ。しかしこの剣を使う以上、敗北は許されない」
「……これ以上の時間稼ぎは無理ですか。仕方ありませんね」
そう言って、整えていた準備を目に見える形で示す。
仮面を付けていた俺、その体はエクリのものであり、今は【魔王】を再現している。
そしてその【魔王】は、ドッペルゲンガーの【魔王】だ。
体は更に変貌し、異なるものへ──まさに目の前に居る女性と瓜二つに。
「我を模するか」
「無論、このままでは贋作が負けてしまいますので──このように」
部分的な模倣、それにより『騎士王』に変化していた体のうち、右腕だけを更新。
形だけ、本当の意味で効果を発揮していなかった宝石が、異なる太さの腕で輝き出す。
「今だけは、裏技ですが使えるようになりますので……」
「! それは、いったい」
「ええ、答え合わせをしましょうか! これこそが『プログレス』の極致ですよ! ──『イモータルマスター』!!」
マスター系の『プログレス』、それは俺やエクリでも模倣できない。
だがそれが今、宝石から稼働し力を発揮しつつある……まあ、絡繰りは簡単だぞ。
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