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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その21
しおりを挟む最凶の【魔王】に成り代わる。
それが元より、発現者の願い。
正確には、それによって得られる力ぐらい無ければ、という強迫観念のようなもの。
──『プログレス:ファントム・オブ・ファン』。
仮面型のソレを着装している今、俺はもう一人の【魔王】そのもの。
ありとあらゆる存在を模倣し、その身に体現する埒外の魔人。
「たしか、こう……でしたか──“焼夷”」
「……」
仮面を付けているのは、憑依している俺自身ではなくエクリの体。
だがその片腕が、俺の意思に応じて異なる人物の腕となる。
かつて、強者の宴で披露された【魔王】による魔法の連発。
その際に用いられていた腕をイメージし、魔法を発動してみた。
結果、周囲に広がったのは粘っこい炎による包囲網。
俺と『騎士王』を閉じ込め、この場から逃がさんとする。
「自ら退路を断つか……その腕、やはり過去の【賢者】のモノだな」
「そうなのですか? 私はその辺りのことは理解せず、あの時の光景を思い出していただけなのですが」
「すでに故人だ、気にすることは無い」
「そうですか。では──“地基改変”」
さすがは【賢者】の腕、魔力を非常に通しやすく高位の魔法もスムーズに発動した。
エクリのすべての術式に対応したスペックはあるが、本質的に闇属性特化。
そのためそれ以外の術式だと、少々手間が掛かるのだが……【賢者】は違う。
部分的だろうと職業の恩恵からか、自動的に魔力が練り上げられていく。
周囲を這う炎ごと、地面が揺れて地盤が動いていく。
多少強引にでも、『騎士王』を動かす──彼女が杖を持つ。
「──」
術式名も何もない、ただ握り締めた杖を地面に付けただけ。
だがたったそれだけのアクションで、揺れ動いていた地面は停止、炎も掻き消える。
無詠唱、それも術式名すら告げる必要のない完全なモノ。
術式すべての構成を、完璧把握していなければできない術師における技術の極致。
「──」
「っ……水と風──“氷結世界”!」
次いで杖が振るわれ、激しい水の流れと吹き荒ぶ突風が顕現する。
対抗できる術式を探し、氷属性の上位版である氷河の術式を以って防ぐ。
万物を凍てつかせる、なんて伝説のある魔法だったのだが……相殺が精一杯。
魔力の波動はお互いを喰らい合い、そのまま消える──ただし、俺のすぐ近くで。
「『生者』、いや『超越生者』。このまま児戯を繰り返すか?」
「…………。いえ、やめておきましょう」
より過激な術式もあるにはあるが、通用するはずがない。
完全無詠唱でそれだけの出力だ、手順を踏めばそれ以上の威力になる。
………………うん、自画自賛だがさすがは俺が作った杖だな!
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