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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その20
しおりを挟む邪悪深殿 百層
勝率はほぼゼロパーセント。
最後の階層で立ちはだかるのは、冒険世界最高の存在──『騎士王』。
「と思ってきましたが……やはり、予想通りでしたか」
「──貴公の予想とは、このような状況であることか?」
「ええ。一対一、そもそもこれ以外では貴女に勝つことなど不可能でしょう」
辿り着いた百層、そこでただ一人俺を待っていた『騎士王』。
鎧に加え、星の剣と鑓、竜の長杖やらを装備した本気モードである。
正直、『闘技領域』を展開して大量の固有種で攻めようかという案もあった。
だが、デタラメに強い彼女が一度話していたことがある──集団戦は得意だと。
言葉通りの意味合いもあるだろうが、それに加えて星の理が加わる可能性がある。
要するに、多対一において発動する何らかの仕組みがあるかもということだ。
実際、権能だけでなく[称号]なども考えれば、そうおかしなことでもない。
一対一でのみ発動するモノもあるかもしれないが、こちらに賭けて単独で挑む。
「本来であれば、先んじて食品で交渉を持ちかけるつもりではありましたが…………今の貴女が相手では、不要でしょうね」
「そうだ。生憎、これは星より与えられし勅命である。貴公がどのような揺さぶりを仕掛けようと、定められた理に従い、ただ我は動くのみだ」
「ええ、ええ。充分に承知しております。私もまた、その理に抗いたく動いているのですから。たった一人……いえ、一つの星を犠牲にして何が『超越者』ですか。その名は返上し、星敵として挑ませてもらいます」
我、と一人称が変わっている『騎士王』はいわゆるお仕事モード。
普段のボケボケした感じは消え、クールなデキる女性といった風格を醸し出す。
対する俺はただの雑魚、企業戦士としての力など彼女に到底及びはしない。
それでも戦うのだ、たった一つの目的を果たすために──仮面を被ろうとも。
「──『インストール:ファントム・オブ・ファン』」
「……それは?」
「ある少女は願いました、あの人のように力ある存在になりたいと。憧憬をその身に、己そのものを上書きする形で」
「…………厄介な願い事だ」
仮面型の『プログレス』を着装すると、そこを起点に変化が発生する。
体が作り替わり、俺はまったく異なる姿へと変貌していく。
すでにエクリという異なる器を使っていたうえで、更に重ねて行う再演。
今この場に、かつて起きずに終わった戦いが幕を開く。
「正しく演じるのであれば、口調やら態度を変える必要もあるのでしょうが……『友にそのような苦労は不要』、と言われてしまいましたからね。そのままで行きましょうか」
「──【魔王】、か」
「はい、今だけの簡易【魔王】です」
発現者はうちの幽霊娘、カルル。
彼女の願いにより、【魔王】が求めた理想はより近い形で体現された。
発動条件に、まさかの【魔王】自身の許諾が居るという超絶ハードな条件も、俺であればと許してもらい、今に至る──最高には、最凶をぶつけよう。
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誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。
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