虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,352 / 2,813
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄遂行 その20

しおりを挟む


 邪悪深殿 百層

 勝率はほぼゼロパーセント。
 最後の階層で立ちはだかるのは、冒険世界最高の存在──『騎士王』。

「と思ってきましたが……やはり、予想通りでしたか」

「──貴公の予想とは、このような状況であることか?」

「ええ。一対一、そもそもこれ以外では貴女に勝つことなど不可能でしょう」

 辿り着いた百層、そこでただ一人俺を待っていた『騎士王』。
 鎧に加え、星の剣と鑓、竜の長杖やらを装備した本気モードである。

 正直、『闘技領域』を展開して大量の固有種で攻めようかという案もあった。
 だが、デタラメに強い彼女が一度話していたことがある──集団戦は得意だと。

 言葉通りの意味合いもあるだろうが、それに加えて星の理が加わる可能性がある。
 要するに、多対一において発動する何らかの仕組みがあるかもということだ。

 実際、権能だけでなく[称号]なども考えれば、そうおかしなことでもない。
 一対一でのみ発動するモノもあるかもしれないが、こちらに賭けて単独で挑む。

「本来であれば、先んじて食品で交渉を持ちかけるつもりではありましたが…………今の貴女が相手では、不要でしょうね」

「そうだ。生憎、これは星より与えられし勅命である。貴公がどのような揺さぶりを仕掛けようと、定められた理に従い、ただ我は動くのみだ」

「ええ、ええ。充分に承知しております。私もまた、その理に抗いたく動いているのですから。たった一人……いえ、一つの星を犠牲にして何が『超越者』ですか。その名は返上し、星敵として挑ませてもらいます」

 我、と一人称が変わっている『騎士王』はいわゆるお仕事モード。
 普段のボケボケした感じは消え、クールなデキる女性といった風格を醸し出す。

 対する俺はただの雑魚、企業戦士としての力など彼女に到底及びはしない。
 それでも戦うのだ、たった一つの目的を果たすために──仮面を被ろうとも。

「──『インストール:ファントム・オブ・ファン』」

「……それは?」

「ある少女は願いました、あの人のように力ある存在になりたいと。憧憬をその身に、己そのものを上書きする形で」

「…………厄介な願い事だ」

 仮面型の『プログレス』を着装すると、そこを起点に変化が発生する。
 体が作り替わり、俺はまったく異なる姿へと変貌していく。

 すでにエクリという異なる器を使っていたうえで、更に重ねて行う再演。
 今この場に、かつて起きずに終わった戦いが幕を開く。

「正しく演じるのであれば、口調やら態度を変える必要もあるのでしょうが……『友にそのような苦労は不要』、と言われてしまいましたからね。そのままで行きましょうか」

「──【魔王】、か」

「はい、今だけの簡易【魔王】です」

 発現者はうちの幽霊娘、カルル。
 彼女の願いにより、【魔王】が求めた理想はより近い形で体現された。

 発動条件に、まさかの【魔王】自身の許諾が居るという超絶ハードな条件も、俺であればと許してもらい、今に至る──最高には、最凶をぶつけよう。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

悪役令嬢、資産運用で学園を掌握する 〜王太子?興味ない、私は経済で無双する〜

言諮 アイ
ファンタジー
異世界貴族社会の名門・ローデリア学園。そこに通う公爵令嬢リリアーナは、婚約者である王太子エドワルドから一方的に婚約破棄を宣言される。理由は「平民の聖女をいじめた悪役だから」?——はっ、笑わせないで。 しかし、リリアーナには王太子も知らない"切り札"があった。 それは、前世の知識を活かした「資産運用」。株式、事業投資、不動産売買……全てを駆使し、わずか数日で貴族社会の経済を掌握する。 「王太子?聖女?その程度の茶番に構っている暇はないわ。私は"資産"でこの学園を支配するのだから。」 破滅フラグ?なら経済で粉砕するだけ。 気づけば、学園も貴族もすべてが彼女の手中に——。 「お前は……一体何者だ?」と動揺する王太子に、リリアーナは微笑む。 「私はただの投資家よ。負けたくないなら……資本主義のルールを学びなさい。」 学園を舞台に繰り広げられる異世界経済バトルロマンス! "悪役令嬢"、ここに爆誕!

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

処理中です...