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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その11
しおりを挟む邪悪深殿 八十九層
星敵とは何なのだろうか。
そんなことを改めて思いながら、迷宮内を進んでいく。
八十層での決死の逃亡から数十分が経過しており、当然ながら次の階層では守護者たちが勢揃いのはず……同じ手は通用しないと考えるのが妥当だろう。
「本当は見れない星敵化処理、アレを読むに世界が星敵誕生に関わっているのは分かる。リソース支払いの関係上、無尽蔵に創りはしないだろうが……目的はあるんだろうな」
たとえば、魔物たちの進化の果て。
レベル250までの通常進化に加え、固有種として処理される特殊な進化──超越種や災凶種などにもそうした処理がある。
特殊なリソースを与え、遺製具をもたらすように存在を作り替えるのだ。
星敵もまた同様に、討滅された際に報酬が星から渡されることになる。
「まあつまり、星敵は遺製具を出す固有種以上に狩られることを求められる存在……であるにも拘らず、星が必要としている。正しくはそれを求められている……のかな?」
要するに、星としてそれをしなければならないナニカがあるのかもしれない。
もちろんこれは俺の妄想に過ぎないし、予想が掠ってもいない可能性がある。
だが星敵を、固有種を生み出す必要が星にあるかと言われると……正直微妙だ。
それらはすべて、人族が強くなるためのシステム──免疫とその恩恵のようなもの。
ワクチンを接種し、本来のウィルスに打ち勝つための準備をするように。
……自分でも考えが纏まらないが、それを口で呟くだけでいい。
《──旦那様のお考えは、あながち間違っていないかもしれない》
俺には『SEBAS』が付いている。
まあ、全然違っていたとしても、かなり強引な修正をしてくることがあるんだけども。
《案役街に類似する情報がございました。いづれ、解析を終了した際にご報告を上げようと思っていましたが……》
「いいよ、その辺は『SEBAS』の匙加減に委ねているわけだし。今言える範囲で、何か伝えられることは?」
《……星敵は単純な敵──つまり内敵や外敵といった意味だけでなく、競い合う相手という意味をも内包する可能性を秘めていると思われます》
「……競い合う、か。それこそ、監獄が作られたのは好都合ってわけだな」
俺が提案し、『騎士王』が聞き入れ、冒険世界の意思が応えた監獄創造。
それぞれにそれぞれの思惑があり、星の目的が競合だったのかもしれない。
同時に、俺の目的である『プログレス』の成長促進も成されているのだ。
…………いやまあ、それを考えると目的不明な『騎士王』は何なのかと思うけど。
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