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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その09
しおりを挟む八十層の守護者『覆魔殿』を、領域の外へ追いやった。
戻ってくる前に転送陣を踏めば逃亡成功なのだが、最後に抵抗されてしまう。
結果、影を踏んで行っていた行動束縛が解除されてしまい──逸脱した連中による、包囲網が構築されていった。
「──“再生入器:呼群波狼”」
殴り飛ばされた後、宙で状況を確認した俺はすぐに対処を開始する。
勾玉型の加工遺製具を使用し、狼の固有種が有していた能力を起動。
俺の持つリソースを喰らい、森羅万象から狼の群れを生み出していく。
相手が相手なので、そのすべてが本来の生物のレベル限界である250で固定だ。
「行け──『支援術式01』!」
俺の持つ支援系の職業能力やそれに付随した術式などを、一つに纏めたプログラム。
いちいち管理するのが面倒なそれを、名称の宣誓と共に自動で行ってくれる。
実際それができる職業能力は存在するようだが、こちらはほぼマニュアル。
一から百まで、『SEBAS』が演算しながら調整を行ってくれるのだ。
そんな支援効果もあって、狼たちは頑張って俺を守る肉壁と化す。
──それでも、彼らが一蹴されるのにはそう時間は掛からない。
「ははっ、こりゃあ殴り甲斐があるな!」
先ほど俺に一撃を加えた何者か。
上半身裸のその男は、ただ眼前に対して己が右手を突き出す──次の瞬間には、その先に居た狼すべてが消滅していた。
《解析完了──【拳星】、武闘世界出身の者です。『極逸』ではございませんが、その分『プログレス』を着装しております》
(……あっ、本当だ)
星シリーズの職業は、基本的にスペックが高い者が選ばれる。
ショウは剣で、『騎士王』は鑓で──目の前の男は拳で選出された。
能力が仮にショウの【剣星】と似通っているならば、ある程度対策は取れる。
ただし、あちらもあちらでかなり理不尽なものだったので、完璧とは言えないが。
「どうした、この程度ならまたさっきみたいに殴られるぞ!?」
「……いえ、かなり手酷い傷を負いましたので、これ以上は勘弁したいですね」
そう、防御はしたがかなり強烈だった男の一撃──エクリの自動修復機能に加え、一時的に体の再生速度を高めるよう促さなければならないほどに。
だからこそ反撃に動かず、狼たちを代わりに動かしているのだ。
こちらにわざわざ話しかけてきたのは、それが終わることを察せられたか。
「改めまして、『生者』です」
「おう、【拳星】だ。死なないお前なら、いくらでも俺の拳を受けられる。だから安心して死んでくれ」
「……話がおかしくありませんか?」
「いいや、どうでもいい!」
どうでもいい、と言われてこれ以上返事もできない。
生き残るためにも、そして次の階層に行くためにも何とかしないと。
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