虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄遂行 その08

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 念入りな準備と共に行う『覆魔殿』襲撃。
 周囲の連中から力を奪い、それを用いて行使する[カゲフミ]の能力群。

 分身、無効化、そして転移陣。
 この場から『覆魔殿』を追い出せれば、次の階層へ向かうことができる。

「“無影供”、“無影供”、“無影供”……そろそろ諦めませんか?」

「抵抗する、ということは邪魔されては困るのだろう? ならば、全力で抗うだけだ!」

 影で描く転移陣だが、さすがに『覆魔殿』レベルの実力者を相手にするのであれば、相応の規模が必要となってしまう。

 だからこそ、“印影”は一定の速度でしか進まない代わりに外部からの干渉を受け付けることが無い。

 座標の変更もできない関係上、陣の上から離れられると発動は意味を無くすのだが。
 俺がこの場に堂々と出てきたのは、それを防ぐためである。

「“影踏ミ”、シンプルですがそれゆえに大変効果的な能力です。術式的な回避は対処できませんが、物理的な移動であればほぼ完璧に封じることができますので」

「チッ……」

 なお、これもまた“影蹂満”と同様に周囲の連中全員に行使していた。
 本来であれば、影を踏むことが難しいという前提条件ありきの燃費の良さである。

 人数が多い分、成功判定もシビアになるがそこは生産職の本領発揮。
 足りなくなる身力・能力値は随時回復ポーションみ補給、行動の自由を奪っていた。

 それでも近接職連中は、高い物理系能力値で強引に動いている……弱体化しているが。
 だからこそ“影鬼”が戦い、縛りプレイ中の彼らとギリギリ抑え込めていた。

「…………いいだろう、今回もまた負けだ。前回といい、真っ向から挑めぬのか」

「ははっ、申し訳ございません。何分、これが性分なものでして」

「が、負けたからといって足掻かぬ理由もあるまい。せいぜい苦しむがいい!」

「……ええ、そうさせてもらいますよ」

 ようやく“印影”が転移陣を完成させ、その上に乗っている『覆魔殿』を運ぶ。
 だが完全に消える直前、彼が何かの術式を発動させていた。

 いったい何をしたのか、なんてわざわざ考える必要はない。
 俺の視界に差し込む光、それは黒い太陽の前に消えたはずのもの。

 だが間違いなく、それはそこにあった。
 理由も理屈も今はいい、重要なのはそれによって引き起こされること──“影鬼”との接続がすべて途絶え、死の警鐘が鳴る。

「っ……!」

「おらぁっ!!」

 強烈な拳撃。
 両腕をクロスして防ぎつつ、あえて後方に飛ぶことでそのまま回避に移る。

 現実であればともかく、ここはレベルやスキルのある世界。
 後ろにも警鐘は反応していたので、その途中で宙を蹴り、勢いを殺しその場に残る。

「……なるほど、やられましたね」

 宙返りをして見たのは、空を舞う巨大な鳥だった。
 自ら燦然と輝くその鳥──否、擬似生物によって黒い太陽は掻き消されたのだ。

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