上 下
2,338 / 2,733
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄遂行 その06

しおりを挟む


 邪悪深殿 八十層

 混沌勢の駒となった星敵が暴れ、文字通り混沌と化している八十層。
 だが突破は出来ない、まだ八十層の守護者がどこかに居るからだ。

「守護者はいったい、どこに居るのやら」

《守護者にはその補正が付いております。その特定が済めば、見つけられるかと》

「今は乱入に気づかれないよう、こっそりといかないと──」

『──『生者』が、『生者』が居るぞ!!』

「…………“孤絶ノ衣”」

 どこかの誰かが俺を感知したのか、あるいは別のナニカで気づいたのか。
 いづれにせよ、俺の存在が完璧に知覚される前に術式での隠蔽を図る。

 存在を遮断する術式が、俺の姿を希薄に。
 加えてアイテムや[称号]の効果を重ね、システム的にも物理的にも俺を見つけることができなくしていく。

(…………とりあえず、大丈夫かな?)

 混沌勢は禍々しい魔物たちも引き連れていて、俺を探すためにそのうち数体を使う。
 彼らの文字通り人外的感覚で見つけられるのが、最大の懸念だった。

《混沌の使者が生み出した魔物で、ある程度の解析は済んでいます。そちらから想定される方法は、すでに対策をしております》

 思念を読み取り、『SEBAS』が返事をしてくれる。
 こそこそと動く関係上、声を出すと危うい可能性があるからな。

 エクリのハイスペックな体で、擬似的に隠蔽しての隠形移動。
 守護者が逸脱した連中の誰かと想定し、誰なのかを探していく。

(…………アレ、かな?)

《おそらくは》

(というか、『覆魔殿』だろう。まさかここで出張ってくるとはな)

 魔導世界で相対した、術式を擬似的な生物とする権能を持つ『八大星魔』。
 ……おそらくながら、前回の失敗がここへの動員を強制したのだろう。

(こっそり暗殺、なんてのは無理だよな)

《影や周囲に、術式を配置しております。下手に動けば、こちらが危ういかと》

(そうなんだよな……とはいえ、ずっとここに居て状況が良くなるわけでもないと)

《混沌の勢力は有利と言えませんが、何かしらの目的はあるはずです。そちらが始まってから、という選択肢もございます》

 多勢に無勢、一騎当千な逸脱した連中が集まっているので状況は彼ら優勢だ。
 星敵たちもスペックは彼ら以上だが、その数の強さで押し込んでいる形である。

 だからこそ、『SEBAS』が考慮している混沌の連中が企んでいる何かしらの行動。
 それを俺たちも利用して、次の階層へ突破できないかと考えている。

(まあ、最悪倒せなくても排除すればいいわけだし……やってみますか)

 必要そうなアイテムを用意し、より戦場へと近づいていく──この体なら、あの時とは違った振る舞いもできるな。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた

兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。

【第1章完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「お姉様の赤ちゃん、私にちょうだい?」

サイコちゃん
恋愛
実家に妊娠を知らせた途端、妹からお腹の子をくれと言われた。姉であるイヴェットは自分の持ち物や恋人をいつも妹に奪われてきた。しかし赤ん坊をくれというのはあまりに酷過ぎる。そのことを夫に相談すると、彼は「良かったね! 家族ぐるみで育ててもらえるんだね!」と言い放った。妹と両親が異常であることを伝えても、夫は理解を示してくれない。やがて夫婦は離婚してイヴェットはひとり苦境へ立ち向かうことになったが、“医術と魔術の天才”である治療人アランが彼女に味方して――

番だからと攫っておいて、番だと認めないと言われても。

七辻ゆゆ
ファンタジー
特に同情できないので、ルナは手段を選ばず帰国をめざすことにした。

英雄一家は国を去る【一話完結】

青緑
ファンタジー
婚約者との舞踏会中、火急の知らせにより領地へ帰り、3年かけて魔物大発生を収めたテレジア。3年振りに王都へ戻ったが、国の一大事から護った一家へ言い渡されたのは、テレジアの婚約破棄だった。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...