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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄遂行 その05
しおりを挟む邪悪深殿 五十層 最奥
謎の禍々しい空間から脱出し、辿り着いたのは迷宮のもう一つの最奥。
本来、迷宮核が配置されているべき、今は何もない空間。
そこもまた、俺がセーフティゾーンとして確保していた場所だ。
まあ、こちらは普通に特定される可能性があるので、長居はできないのだが。
「『SEBAS』、これは?」
《詳細欄は不明、いえ空白です。意味を与えず効果を与えず、マーキングとして使用しているのでしょう》
「……面倒だな」
転移後、俺の[ステータス]に追加された謎のスキル。
邪縛、と呼ばれる呪いの類だ──ただし、使えるのは神々に連なる者限定。
そんな明らかなマイナス効果付きの代物だが、本来ならばプラスな効果が付くことも。
一長一短、物の見方で変わるというものだが、今回はそれすらも無いようで。
マーキングというより、他の神々が手を出さないように……ということだろうか。
これを付けていると、擬似的に混沌勢の何者かが関わっている証になるわけだし。
「…………失名神話の神々は無視かよ」
《名を失った神を、どのように捉えるかは各神話で違います。混沌の神々の場合、ただ規制が存在しないのかと》
つまりやりたい放題やっているから、俺に付いた失名神話の関係者の証は無視したと。
実際のところ、こういった邪縛は聖職者が神の力を借りれば割と剥がせる。
だがそれにも格の問題が生じ、神様側にも利が無ければならない。
……おそらく頼めばやってくれるだろう、だが彼らの迷惑にはなりたくないな。
「うーん、とりあえず現状維持で。俺たちなりのアプローチで、どうにかできないか……あるいは抑え込めないか考えてみよう」
《畏まりました、優先順位のほどは?》
「割と低めで。アイスプルにさえ帰れば、逆探知とかは使えなくなるし」
一番の懸念事項に関しては、魔導世界への密航ですでに解決している。
人造遺製具を触媒に生み出した術式は、外部への情報流出を防いでくれるのだ。
「まあ、流出するようなら仕方がない……その時は全力で、迎え撃つだけだ」
だが今はその前に、この後起きうるであろう最悪を想定しなければならない。
……マーキングが付いていて、時間稼ぎもバッチリされた──つまりはそういうこと。
◆ □ ◆ □ ◆
邪悪深殿 八十層
「……うわー、乱闘だぁ」
本来待ち受けていたであろう守護者──が誰か分からない状況。
すでに戦闘が始まっていて、完全にいろんな意味で混沌と化していた。
混沌の使徒は事前に、星敵から何人か駒を用意していた。
俺の前に『霧疫』を出したように、今回ここでそれを差し向けたようだ。
だが、各星々から呼ばれた逸脱者たちが、わざわざそれを見逃すわけがない。
ましてや混沌勢の駒、それは何より──神敵としても討たねばならない存在だ。
そんなこんなで、現れた俺に気づかれないぐらい壮絶な戦いが行われている。
それでも俺は次の階層へ向かえない、守護者はどうやら未だ健在のようだからだ。
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