虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,334 / 2,811
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄遂行 その02

しおりを挟む


 ??? ■■■■

 魔物たちに先導(?)され、禍々しい転送陣からどこかへと転移した俺。
 道中妨害しに来た強者たちも、肉壁と化した魔物たちに阻まれ来れなかった。

 ──そう、侵略者と混沌の使徒によって強化された連中によって。

 俺が向かった先は、そんな連中が絶対に細工している空間。
 あからさまに黒い闇の中、俺は懐中電灯を片手に歩く。

「……やっぱり素手で」

 起動し、光が辺りを照らす──かと思ったら、闇が暗過ぎて光は先を照らせない。
 なのでせっかく準備したアイテムは再びしまい込み、闇の中を歩んでいく。

《暗視はどうやら不可能なようです。加え、地形そのものが歪んでおり反響による把握も困難な状態にあります》

「……仕方ありませんね、招待された身でそこまで文句は言えませんか」

 少なくとも、地面を踏む感触はしっかりと感じ取れる。
 コンクリートを踏むような固さ、それを踏み締めて進んでいく。

「どこまでも続いていますが、これはいったい何が目的なのでしょうか?」

 たしかに、こういった空間でひたすら孤独だと精神が狂うというのは定番ではある。
 しかしながら、俺の場合『SEBAS』が居るのでまったく困らない。

 ついでに言うと、休人なのでいつでもここから去って人の温もりを知れるわけで。
 ……要するに、時間を無為にする行いは避けたいわけだ。

「──“再生入器:命燃やす灯火アライボウィスプ”」

 勾玉型の人工遺製具を握り締め、起動。
 呼ぶのはアイスプルの固有種、『命火灯玉[アライボウィスプ]』。

 一時的に遺製具の中に、彼の力が宿りその能力を行使可能になる。
 名前を冠する能力は、それ自体が原典──闇の中に火が灯る。

「命を燃やす、いい言葉ですね……これは、私と非常に相性がいい」

 普通に考えれば、魔物に与えられるリソーススペックを前提とした能力を、人の身で使用しても適合しない──が、休人という特殊な身と『生者』の権能は噛み合っていた。

 それに加え、今では星敵としての更に膨大なリソースが存在する。
 ……まあそちらはあまり関係ないが、いづれにせよ都合よく行使できた。

「聞いているでしょうから、ご説明いたしましょう。“命燃やす灯火”、それは端的に申してしまえば──死ねば死ぬほど、確実に相手にダメージを与えられる能力です」

 そう、それに尽きる。
 俺も[アライボウィスプ]も、残機を基に無双する派──ただしあいつはきちんと本体は別枠で、俺は本体が残機制なだけ。

 だからだろう、休人という無限のアバターがある俺の方がこの能力は適していた。
 それは本来、自分の死という重いリスクがあるからだろう。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助(旧ハチ助)
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

処理中です...