虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄実行 その27

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 ダメージの通りについて検証しようと思ったら、試した全種類の攻撃に対する高い耐性値を得た災凶種ディザスターシリーズの大樹。

 あからさまなまでの持久特化な能力。
 時間稼ぎそのものなのだが、他の階層から乱入も来ないということで、いろいろとやることになった。

「──これは……!」

「森とかは、さすがにあったよな」

「は、はい。今は不毛な世界になってしまいましたが、緑溢れ命漲るような場所もちゃんとありましたので」

 宙に浮かんだドアノブ、そこを基軸にして構築された半透明なドア。
 七十層とは違う空間と繋げられたその先から、顔を出しているのは一人の少女。

 この星の意思にして、本来迷宮を統べるはずだった存在。
 今はその地位を剥奪されてしまった彼女だが、それゆえに俺は彼女と共に居た。

「実際に見てみてどうだ? 俺の世界でも、やっぱり映像越しよりも実物を体感した方がいいっていう話があるし」

「…………はい、木々の力強さを感じられます。ああ、本当に懐かしい……」

「まあ、実際には災凶種の厄災だし、これそのものが懐かしかったら不味いんだけどな」

「そういうことは、言わないお約束です!」

 自然セラピーという概念もあるので、少女にそれを体験してもらったわけだ。
 どうやらやってみてよかったようで、彼女のツッコミの性能も上がった……気がする。

  ◆   □   ◆   □   ◆

 ──とはいえ、結局現状は変わらない。
 先ほどまでのやり取りはあくまで、妨害が来ないだろうと思ったからこそやっただけであり、それ以上の意味など無いのだから。

 とはいえ、その間も寸分の狂いも無く時間だけが過ぎている。
 星々にとっても都合は良いだろうが、ある意味俺にとってもちょうどいい。

 結局のところ、時間を稼ごうとそうでなかろうとやることは変わらないからだ。
 焦ったり急いだりしても、『騎士王』レベルと相対すれば足止めされて当然。

「まああれだな、それでも少し張り切るぐらいがちょうどいいのか──『星域』展開」

 周囲に展開するのは、この場をアイスプルとして上書きするための簡易的な結界。
 誰を拒むでもない、ただ隔てる──ここはアイスプル、己の領土であると。

「そして、設定変更──『闘技領域』」

 特に変化は無い、だが確実にこの場は大きく変化した。
 たとえ今、俺は星敵としてのアイテムを壊されようと決して死ぬことは無い。

 そういった性質が、俺の周りに構築された世界に定義付けられた。
 だが今回それを広げたのは、俺のためではない──これから呼び出される存在のため。

「さぁ、出番だぞ。存分に暴れ回れ」

 今度は分かりやすく、俺の周りに魔法陣が構築されていく。
 それは召喚陣、こことは違う場所から何者かを呼び出すためのもの。

 そしてそれは、『闘技領域』を展開しなければ呼び出せない。
 ──過保護な兎が、そうしろと命じているからな。

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