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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄実行 その25
しおりを挟む邪悪深殿 七十層
──そこは、光届かぬ樹海の中だった。
「……環境が、違い過ぎる」
深殿、もとい神殿を模した迷宮を七十層まで(ショートカット込みで)駆け抜けてきた俺は、辿り着いた七十層でそう呟く。
環境の改変、それ自体は普通ありえないのだが……この状況に限り例外だ。
まずこの迷宮を管理する存在、星々の意思である程度環境は調整できる。
それに加え、そもそも素の実力で環境の上書きができそうな連中が集まっていた。
ここは七十層、集められた強者の中でも上澄みしか残っていない。
「というか、人の気配じゃないような……」
《ご明察です、ドローンから送られてきた映像を反映します》
「…………Oh」
思わず英語調で言いたくもなる光景。
樹海の中と俺が認識したこの階層、だがそれはある意味正しくもあり間違ってもいた。
「…………これ一つで全部かよ」
それはアイスプルにも存在する、巨大な大樹よりも更に巨大な一本の木。
そのためだけに階層を広くしたのか、どこまで上昇しても全貌が映し出されないほど。
ある意味、嫌がらせの極致というかあからさまな時間稼ぎというか。
これにより、星々がある程度手の込んだ仕掛けを用意できることが分かった。
「階層の交換、あるいは上書きができると想定しないとな……こりゃあ不味い」
《旦那様、解析が完了しました。再現ではありますが災凶種で間違いありません》
「星敵使ったり災凶種使ったり、本当になりふり構ってないな今回は」
星敵を収容する監獄にも、超越種の個体は居ても災凶種の個体は居なかった……星でも制御できないヤバい連中だからこそ、災凶種足り得るのだ。
それがダース単位で生息しているアイスプルという超ヤバい星もあるがそれは置いておくとして、問題はそれと同等の危険性を持つ個体がこの場に存在すること。
植物系の魔物ではあるが、高低はともかくある程度の知性は有しているだろう。
そのうえで、星が命じた指令は絶対に実行してくる……今回は足止めだ。
「これを排除するのはほぼ不可能、加えて迷宮の性質上殺しても無駄……というか、これに関しては殺しきれないだろうな」
死の因果をアイテムとして生み出し、用いることができる『死天』の権能。
だが策はいくつも講じることができ、中でも手っ取り早い方法──それは耐えること。
死を上回る速度で回復すれば、死んでいないのと同じこと。
死の因果は生成された際のリソースに応じたものなので、限界が存在する。
つまり目の前の樹海を生み出した本体の、圧倒的生命力を上回ることができなければ決してこの階層から出られないわけだ…………もう詰んでないか?
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