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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄実行 その20
しおりを挟む薙刀モドキに刀モドキで挑む。
ほぼ壊れない頑丈な性質、そして最適な動きを体が勝手に取ってくれているからこそ、武技無しであればある程度戦えた。
「良い、良いぞ! 話は『飛武』殿より聞いておる! その寸分足りとも狂うことの無い動き、まさに本物だ!」
「……いえ、偽物ですよ。ですが、それゆえにまだ可能性を秘めています」
「おおっ、それは頼もしい! では、我もその介添えをしてやろう──“切斬”!」
ついに武技を使いだした『武尽』。
武技特有の力の高まりが、刃に集中しそのまま俺に向けて振り下ろす。
受けること自体はできるだろうが、勢いに耐えられないと判断し回避を選択。
体がその意思を受けすぐさま動き──俺の予想以上に、横っ飛びで全力回避。
だがその選択は正しかったようで、斬撃系の武技とは思えないほどの衝撃音と土煙がその一撃によって生み出された。
すぐに立ち上がり態勢を整えていると、煙の中から『武尽』が現れる。
だが一つ、煙に包まれる前と違う点──その手に握る武器が変わっていた。
「武器は、そちらでよろしいので?」
「いやなに、そろそろ飽きたであろう? 次はこれを使おう──“穿撃”!」
「くっ!」
突き出された鋭い刺突を、刀で受け流す形でどうにか捌く。
振るわれるのは巨大な槍、本来であれば馬上槍として扱われるような代物。
それを容易く、片手で振り回す『武尽』。
膂力は想定通り凄まじい、そのうえで機人族らしく技巧の方もバッチリだ。
「ペースアップと行こうか──“貫通槍”、“一閃突”、“疾風突”、“突進突”、“五月雨突”、“多連突”、“灼熱槍”!」
「う、うぉおおおお!」
「ふははははっ! いいぞ、武技を使わずにこれを捌くか!」
一撃一撃が重いそれを、我武者羅に体が動きギリギリで捌く。
槍の射程は中距離、刀では届かない場所から一方的に振るわれている。
お陰で体にダメージが蓄積していき、何度も死に始めていた。
すぐに『超越生者』と『星命の鼓動』で蘇生を繰り返すが、これでは今までと同じ。
「──“一刀両断”!」
「……ふむ」
反撃として納刀を省き、略式で行う斬撃。
基本的に刀は納刀を前提で行われるので、威力はそこまででない──それでも一流の武人の動きをなぞり、技巧だけで威力を確保。
お陰で一時的に『武尽』を跳ね除けられ、距離を取ることができた。
だが今の一撃で、相手方にもいろいろと知られてしまったようだ。
「……惜しいな、力が足らん」
「ええ、でしょうね。ですが、いくらでも足りないならば足せばいい──“孤独蟲毒”」
死を重ねることで発動する自己強化。
これもある意味、『生者』が失われていたら使えなくなっていたところだ……だが使える、だからこそ戦える。
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