虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,321 / 2,830
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄実行 その19

しおりを挟む


 機械仕掛けの武人、武蔵坊弁慶みたいな姿の『極逸』である【武芸王】、『武尽』。
 肩書が盛りだくさんな彼との戦いは、まだ始まっていない。

 改めて思い出すと、前に来た武闘世界からの武人も翼人族という特殊な種族だった。
 もしかして、普人よりもそういった種族の方が『極逸』に向いているのでは?

「ほぉれ、そろそろ始めるぞ!」

「! ええ、よろしくお願いいたします」

「うむ、礼に始まり礼に終わる。これこそ武の競い合いよ!」

「ええ、部分的に肯定します。始まりに礼儀は必要です──しかし、少なくともこの場において、終わりとは生き残ること。そのためであれば、私は礼儀を捨てましょう」

 背中から薙刀……のような超巨大な武器を取り出す『武尽』。
 木の幹のように太い柄に、ギロチンのように厚く重々しい刃が付いている。

 鋭さが求められる東洋版の薙刀とは違う、重さで断ち切る西洋版の薙刀だろうか。
 まあ、武蔵坊弁慶が東洋の人とは言え、結局サイバーでメカチックな武人だしな。

「むぅ、仕方あるまいか。だが、相容れなかろうとせねばならぬのが使命! その命、奪わせてもらうぞ!」

「──バトルラーニング、偽・武神。そして武器は『星核の武玉』で“星変万還”を」

「おおっ、話には聞いていたが星具を個人で所有するか! いいぞ、それもぜひ我のコレクションに加えたい!」

「残念ですが、私のモノですので。まあそうですね、星敵として討滅されれば権利が移るかもしれませんね」

「……それはそれは、本気で討つ理由が増えてしまったわ」

 本来であれば、星具は個人で所有できないので自動的に俺が何らかの理由で消滅すれば権限は星に戻る。

 だが事情が絡み合い、星敵として俺が討たれればおそらくそれは正式な形で討伐者に与えられると思われる……【救星者】が星敵になるケースなど、レア過ぎて知らないが。

 なお、本来星具は遺製具と違い一人一つしか持てないアイテムとのこと。
 それが許されるのは、『騎士王』のような特殊な存在──あるいは【救星者】。

 だからこそ、あの『騎士王』は俺が作った鑓を扱っているわけだ。
 保有数に制限があるなら、そんなもの注文してこなかったに違いない。


 閑話休題せんとうかいし


 偽・武神の戦闘プログラムが、振るわれた薙刀モドキを捌く。
 形を変え、玉から武器となった宝珠が模るのは──刀。

 もちろん、本来の俺が乱雑に刀を振り回せば強烈な一撃で折れてしまうかもしれない。
 東洋の刀は斬ることを目的としており、西洋の剣に比べて重厚さに欠ける。

 だが星具は基本、耐久度が無限だ。
 そのうえで、最適な動きを結界越しに取れば──たとえ武闘世界の武人が相手でも、無傷で相手取ることができる。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

ある平民生徒のお話

よもぎ
ファンタジー
とある国立学園のサロンにて、王族と平民生徒は相対していた。 伝えられたのはとある平民生徒が死んだということ。その顛末。 それを黙って聞いていた平民生徒は訥々と語りだす――

【完結】デスペナのないVRMMOで一度も死ななかった生産職のボクは最強になりました。

鳥山正人
ファンタジー
デスペナのないフルダイブ型VRMMOゲームで一度も死ななかったボク、三上ハヤトがノーデスボーナスを授かり最強になる物語。 鍛冶スキルや錬金スキルを使っていく、まったり系生産職のお話です。 まったり更新でやっていきたいと思っていますので、よろしくお願いします。 「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過しました。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】家族にサヨナラ。皆様ゴキゲンヨウ。

くま
恋愛
「すまない、アデライトを愛してしまった」 「ソフィア、私の事許してくれるわよね?」 いきなり婚約破棄をする婚約者と、それが当たり前だと言い張る姉。そしてその事を家族は姉達を責めない。 「病弱なアデライトに譲ってあげなさい」と…… 私は昔から家族からは二番目扱いをされていた。いや、二番目どころでもなかった。私だって、兄や姉、妹達のように愛されたかった……だけど、いつも優先されるのは他のキョウダイばかり……我慢ばかりの毎日。 「マカロン家の長男であり次期当主のジェイコブをきちんと、敬い立てなさい」 「はい、お父様、お母様」 「長女のアデライトは体が弱いのですよ。ソフィア、貴女がきちんと長女の代わりに動くのですよ」 「……はい」 「妹のアメリーはまだ幼い。お前は我慢しなさい。下の子を面倒見るのは当然なのだから」 「はい、わかりました」 パーティー、私の誕生日、どれも私だけのなんてなかった。親はいつも私以外のキョウダイばかり、 兄も姉や妹ばかり構ってばかり。姉は病弱だからと言い私に八つ当たりするばかり。妹は我儘放題。 誰も私の言葉を聞いてくれない。 誰も私を見てくれない。 そして婚約者だったオスカー様もその一人だ。病弱な姉を守ってあげたいと婚約破棄してすぐに姉と婚約をした。家族は姉を祝福していた。私に一言も…慰めもせず。 ある日、熱にうなされ誰もお見舞いにきてくれなかった時、前世を思い出す。前世の私は家族と仲良くもしており、色々と明るい性格の持ち主さん。 「……なんか、馬鹿みたいだわ!」 もう、我慢もやめよう!家族の前で良い子になるのはもうやめる! ふるゆわ設定です。 ※家族という呪縛から解き放たれ自分自身を見つめ、好きな事を見つけだすソフィアを応援して下さい! ※ざまあ話とか読むのは好きだけど書くとなると難しいので…読者様が望むような結末に納得いかないかもしれません。🙇‍♀️でも頑張るます。それでもよければ、どうぞ! 追加文 番外編も現在進行中です。こちらはまた別な主人公です。

Free Emblem On-line

ユキさん
ファンタジー
今の世の中、ゲームと言えばVRゲームが主流であり人々は数多のVRゲームに魅了されていく。そんなVRゲームの中で待望されていたタイトルがβテストを経て、ついに発売されたのだった。 VRMMO『Free Emblem Online』 通称『F.E.O』 自由過ぎることが売りのこのゲームを、「あんちゃんも気に入ると思うよ~。だから…ね? 一緒にやろうぜぃ♪」とのことで、βテスターの妹より一式を渡される。妹より渡された『F.E.O』、仕事もあるが…、「折角だし、やってみるとしようか。」圧倒的な世界に驚きながらも、MMO初心者である男が自由気ままに『F.E.O』を楽しむ。 ソロでユニークモンスターを討伐、武器防具やアイテムも他の追随を許さない、それでいてPCよりもNPCと仲が良い変わり者。 そんな強面悪党顔の初心者が冒険や生産においてその名を轟かし、本人の知らぬ間に世界を引っ張る存在となっていく。 なろうにも投稿してあります。だいぶ前の未完ですがね。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

処理中です...