2,316 / 2,815
DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄実行 その14
しおりを挟む魔法による抵抗も意味を成さず、練度の高い仙術(物理)の前に既知の情報は通じず。
むしろ、知っていたからこそその常識に囚われてしまい──危機的状態にあった。
「……一つ、確認を」
「なんだ?」
「私は、これからどういった処置をされるのでしょうか?」
「討滅はできないだろうからな。王から事前に貰った札で封印し、『騎士王』が処置を行う算段だ」
王──【仙王】である少女は類まれなる才の持ち主で、仙術は基本何でも使える。
仙人の術式であれば、少なくとも俺を動けなくしたまま輸送することは可能だろう。
そして『騎士王』──星の裁定者である彼女であれば、俺を滅することも可能なはず。
俺の星敵としての核──心臓と融合している遺製具を、破壊しうる力を持つからだ。
「では、その処置によって私はどうなるのか知っておりますか?」
「再び牢獄の中というのは知っている。が、それ以上は聞かされていない……内容次第でここから通すということもしないぞ」
「ええ、なので重要なのはここから。私が仮に何らかの方法で十層や二十層、誰かが待ち構える層を超えていたなら……皆さんはわざわざ私を追いかけておりましたか?」
「人による、としか言えんな。どの階層で待つかの指示も無く、転送陣で向かった場所での待機を仰せつかっただけのこと」
配置はランダム……いや、違うか。
星々の意図がある程度介入しているだろうし、それが予想通りなら──ある程度はどうにかなりそうだな。
「ちなみに、『闘仙』さんは──」
「もう時間稼ぎもいいだろう。それで、何をするつもりだ?」
「……バレていましたか」
「ここまであからさまだとな。ハァ、そろそろ顔を出せ。王も時折会いたがっているぞ」
彼女の場合、俺というか俺が持ってくる便利グッズが目当てな気もするが。
まあ、言われたことだし行くとしよう──『闘仙』はそういうスタンスなようだし。
「ありがとうございます。それでは、次は今回見せていただいた技についても、勉強させていただきます」
「ふっ、期待しているぞ」
「分かりました。では──“魔力球”」
魔力を球状にして飛ばす、ただそれだけの魔法を発動する。
それ以外の効果など無い魔法だが、今の俺にとってはそうではない。
握り締めた『グランドマロット』が光り輝くと、設定していた異なる魔法が続いて発動する──“空間移動”、視界内のどこにでも行ける魔法が起動した。
本来は遮られている迷宮の機構も、破壊され尽くした影響で一時的に機能しない。
それを突き、実行できる場所に移動していた俺は──十層へと向かうのだった。
0
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説

巻添え召喚されたので、引きこもりスローライフを希望します!
あきづきみなと
ファンタジー
階段から女の子が降ってきた!?
資料を抱えて歩いていた紗江は、階段から飛び下りてきた転校生に巻き込まれて転倒する。気がついたらその彼女と二人、全く知らない場所にいた。
そしてその場にいた人達は、聖女を召喚したのだという。
どちらが『聖女』なのか、と問われる前に転校生の少女が声をあげる。
「私、ガンバる!」
だったら私は帰してもらえない?ダメ?
聖女の扱いを他所に、巻き込まれた紗江が『食』を元に自分の居場所を見つける話。
スローライフまでは到達しなかったよ……。
緩いざまああり。
注意
いわゆる『キラキラネーム』への苦言というか、マイナス感情の描写があります。気にされる方には申し訳ありませんが、作中人物の説明には必要と考えました。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!
七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ?
俺はいったい、どうなっているんだ。
真実の愛を取り戻したいだけなのに。
愛されない皇妃~最強の母になります!~
椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』
やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。
夫も子どもも――そして、皇妃の地位。
最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。
けれど、そこからが問題だ。
皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。
そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど……
皇帝一家を倒した大魔女。
大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!?
※表紙は作成者様からお借りしてます。
※他サイト様に掲載しております。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる