虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄実行 その14

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 魔法による抵抗も意味を成さず、練度の高い仙術(物理)の前に既知の情報は通じず。
 むしろ、知っていたからこそその常識に囚われてしまい──危機的状態にあった。

「……一つ、確認を」

「なんだ?」

「私は、これからどういった処置をされるのでしょうか?」

「討滅はできないだろうからな。ワンから事前に貰った札で封印し、『騎士王』が処置を行う算段だ」

 王──【仙王】である少女は類まれなる才の持ち主で、仙術は基本何でも使える。
 仙人の術式であれば、少なくとも俺を動けなくしたまま輸送することは可能だろう。

 そして『騎士王』──星の裁定者である彼女であれば、俺を滅することも可能なはず。
 俺の星敵としての核──心臓と融合している遺製具を、破壊しうる力を持つからだ。

「では、その処置によって私はどうなるのか知っておりますか?」

「再び牢獄の中というのは知っている。が、それ以上は聞かされていない……内容次第でここから通すということもしないぞ」

「ええ、なので重要なのはここから。私が仮に何らかの方法で十層や二十層、誰かが待ち構える層を超えていたなら……皆さんはわざわざ私を追いかけておりましたか?」

「人による、としか言えんな。どの階層で待つかの指示も無く、転送陣で向かった場所での待機を仰せつかっただけのこと」

 配置はランダム……いや、違うか。
 星々の意図がある程度介入しているだろうし、それが予想通りなら──ある程度はどうにかなりそうだな。

「ちなみに、『闘仙』さんは──」

「もう時間稼ぎもいいだろう。それで、何をするつもりだ?」

「……バレていましたか」

「ここまであからさまだとな。ハァ、そろそろ顔を出せ。王も時折会いたがっているぞ」

 彼女の場合、俺というか俺が持ってくる便利グッズが目当てな気もするが。
 まあ、言われたことだし行くとしよう──『闘仙』はそういうスタンスなようだし。

「ありがとうございます。それでは、次は今回見せていただいた技についても、勉強させていただきます」

「ふっ、期待しているぞ」

「分かりました。では──“魔力球マナボール”」

 魔力を球状にして飛ばす、ただそれだけの魔法を発動する。
 それ以外の効果など無い魔法だが、今の俺にとってはそうではない。

 握り締めた『グランドマロット』が光り輝くと、設定していた異なる魔法が続いて発動する──“空間移動ムーブ”、視界内のどこにでも行ける魔法が起動した。

 本来は遮られている迷宮の機構も、破壊され尽くした影響で一時的に機能しない。
 それを突き、実行できる場所に移動していた俺は──十層へと向かうのだった。

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