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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄実行 その11

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 俺の前に立ちはだかる『闘仙』。
 その先へ向かうため、俺は星敵として得た力と共に戦いを挑む。

 ぶつけ合った拳と拳、だが力量は相手が圧倒的に上。
 衝撃を受け切れないまま弾き飛ばされ──その勢いを利用し、地面を力強く踏む。

「──“地裂脚”!」

 練り上げられた仙丹が、衝撃を何倍にも増幅させていく。
 本来なら肉体が耐えられないレベルに高めようと、すぐに再構築されるので関係ない。

 結果、強固なはずの迷宮の床に大規模な罅割れを生み出した。
 その行先は『闘仙』、だが……彼は何もせずポツリと呟く。

「思えば、『生者』と出会ってからさして時間は経っていないのだな」

「……」

「様々なことがあった。その中で、力は着実に高まっていった。『生者』よ、感謝しようではないか。ゆえに、この一撃をお前に見せてやる」

「!」

 俺の“地裂脚”は何もしていない『闘仙』の仙丹で、あっさりと防がれる。
 そのうえで、今の一撃よりも強烈な技があるとまで言われてしまう。

 見取り稽古という言葉があるように、俺に技を見せることが解析され尽くすことと同義なのを知っている『闘仙』。

 それでも行うのは──単純に、それだけの自信があるからなのだろう。
 目に見えない力が高まり、死の警鐘だけがその危険度を告げている。

 俺から見てこれから行われるのは、先ほど俺が使った“地裂脚”。
 力強く足踏みし、その衝撃を体内で仙丹が増幅して再度足から放出する。

 それ自体はこれまでと同じだ。
 しかし、それでも死亡レーダーだけがその異様さを感じ取っている……いや、分かるヤツがもう一人。

《──旦那様、どうやら仙丹の練り上げが通常よりもかなり強力になっております》

(つまり、増幅量を上げたと? けど、それだけじゃ納得できないな)

《はい。重ねてあの動き自体が、体の各部位で仙丹を増幅させています。アイテムで仙丹の練り上げを行う旦那様では行えない、生来の仙人だからこそ行える技術です》

 要するに、俺がでっかい増幅炉で多少の不足を量でごまかしているのに対し。
 新たなスタイルをとった『闘仙』は、漏れゼロの増幅炉を複数個所で運用している。

 体を循環し、やがて放出される莫大な量の衝撃。
 それをさらに増幅させ、高められたその一撃はこれまでを遥かに超える。

「…………ですが、面白い。邪魔などいたしませんので、どうぞお見せください」

「そう言うと思っていた。ならば、とくと受けてみよ! これこそ──“地裂開闢”!」

 爆発染みた強烈な爆音と共に、その現象は引き起こされた。
 先ほどの俺の一撃を超越した、地面を破壊する大地の怒り。

 …………が、ここはあくまで迷宮。
 上にも下にも階層が存在し、繋がっているわけで──俺たちは破壊された地面と共に、下へと落ちていくのだった。

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