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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄実行 その10

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 邪悪深殿 十層

 星々の策略によるものか、転移が行えなくなっていた迷宮内部。
 原付を物凄い勢いで──それこそ時を超えるレベルで飛ばし、内部を駆け上がる。

「……っと、これ以上は無理ですか」

 本来であれば、守護者が待ち構えている十層ごとの階層。
 その一つ目に文字通り突っ込んだ結果、結界に衝突しそのまま停車させられる。

 原付もまた、保護用に結界を展開していたので損傷は無し。
 だがこれ以上は強引な手段での通行は許されておらず、真っ向から進むしかない。

「つまり、挑む必要があるわけですね──何か意見はありますか?」

「──『生者』、堕ちたか?」

「異なことを。元より、私は正しく冒険世界の『超越者』であったことはございません。ですが、これまで通りのご挨拶はたしかにもうできませんね」

 何の因果か、俺を止めるべく用意された一人目の守護者は『闘仙』だった。
 俺に仙術(物理)を教えてくれた師は、何やら複雑な表情でこちらを見ている。

「では、今は何だと?」

「そうですね……冒険世界から出向し、新たにアイスプル世界の逸脱者となりました。星敵の──『超越生者』と。まあ、長いので気軽に『生者』とお呼びください」

「超越……『超越者』を辞めてもなお、その名が刻まれるか」

「あまり変化はございませんよ。異形になるわけでも、ましてや『騎士王』のような星の裁定者でもございません。死んで、そして生き続ける。しぶといことだけが自慢の、単なる雑魚そのものです」

 うーん、逸脱者よりなんかこうイイ響きの単語が欲しいな。
 今まで『超越者』を名乗っていたのは、そこにカッコ良さを感じていたからか。

 改めてそんなことをうんうんと考えていると、やがて『闘仙』が構えを取り出す。
 それを見て俺もまた、彼に習い倣った動きで同じ構えを取る。

「それもまた、意味のある行動なのか?」

「戦いには関係ないでしょう。ですが、貴方への感謝を籠めています。星敵ですが、これまでと何ら変わっているつもりは無い。私がそう思えるのは、再会した貴方がこうして会話に応えてくれたからですよ」

「……言葉よりも、武人であればこちらで証明したいものだが。いかんせん、お前は体が弱過ぎる」

「ははっ、鍛えて強くなるものであればまだ良かったのですがね!」

 軽口を叩きあった俺たちは、どこかで石が崩れた音と共に動き出す。
 彼は仙丹を練り上げ強化した体で、俺は結界で周囲を囲って固め──拳をぶつける。

 それだけで十層全体に届くほど、強烈な衝撃が広がった。
 そして俺は死ぬ──そのうえで、再び蘇り戦いを続ける。

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