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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄実行 その09
しおりを挟む邪悪深殿
俺用の『プログレス』はあえて発現させないまま、権能枠を空けて外へ向かう。
待ち伏せは自らで処理せずエクリに委ね、悠々自適に目的地へ向かう。
なお、途中で待ち受けるのは基本的に敵しかいないものとする。
……星敵の証であるアイテムを破壊されたら、そのままバッドエンド直行だな。
「だから──そいっと」
忘れている者も居るかもしれないが、俺の心臓には『星命の鼓動』という死なない限り壊れないアイテムが埋め込まれている。
まあ、これ自体はそれを作った状況に合わせて整えた能力なのだが──都合がいい。
遺製具であり星敵の証であるアイテムを、心臓の奥深くに突き刺す。
当然その反動で死ぬが、[称号]の効果で一定時間はそのまま活動できる。
その間にアイテムが心臓と結合──新たなアイテムとして再構築された。
《発動、適応を確認──アイテムは装備として固定されました》
「よし、成功だ」
元より、権能が再構築されるタイミングで『SEBAS』が仕込んでくれた機構。
装備枠を消費しない、他のアイテムと耐久度を共有するという能力。
本来ならデメリットが帯びるそれを、死なない限り壊れないアイテムと融合する。
結果──死ななければ壊れないし、壊れなければ死ななくするアイテムになった。
「まあ、やりようもとい殺りようはいくらでもあるから油断はできないけど」
《圧倒的な火力による討滅、あるいは討滅を放棄しての封印などですね。封印の場合は一定期間での脱出が可能でしょうが、抑制が行われるはずです》
長期間のプレイができなくなるような事態に陥ると、強制[ログアウト]の後に自動的にアバターが回収され、一定期間経過後に再び[ログイン]できるようになる。
それ自体は問題ないのだが、おそらく一度その処理が行われれば討滅成功として扱われると思われる──まあつまり、俺か俺の所有する何かを代わりに支払うわけだ。
星敵としての権能抑制か、あるいはアイスプルに関するナニカか……少なくとも今のように自由なプレイはできなくなると思われるので、何としても阻止したい。
◆ □ ◆ □ ◆
邪悪深殿 二層
「……やられましたね」
一層から飛んで五十層付近まで向かおうとしていた俺だが、機能しなくなっていた転移装置を前にソレを諦めた。
まあ、それができれば最悪そのまま最上階まで向かえるからな。
星の方で何らかの干渉を行い、転移は使えないようにしたのだろう。
そんなわけで改めて、二層からの攻略を強要されている俺──ただし、移動手段として魔力式原動機付き自転車に乗っているけど。
「時間の無駄ですし、飛ばしますよ!」
《原付オプション04『時貫機関』起動──制御開始》
「さぁ、吹っ飛べ!」
行けるところまで加速する。
魔物たちを無視して、俺は原付を全力で飛ばすのだった。
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