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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄実行 その08
しおりを挟むついに俺は星敵となった。
権能は分離してアイテムとなり、また所属も冒険世界からアイスプルへ──ある意味、自由の身となったわけだな。
「あら、『プログレス』は移植しないのですの? せっかく権能が空きましたのに」
「ええ、自分の限界は自分がよく知っていますので──自分だけのパーソナリティを世に知らしめるよりは、よりよい手段をとらせてもらいますよ」
だからこそ、【傾界魔王】には俺が擬似権能である『プログレス』を移植しないのか気になったのだろう。
だがしかし、無限に可能性を秘めるとされる『プログレス』にもパターンはある。
成長の仕方は人によるのだが、その原点として発現する形にはある程度共通点が多い。
要するに、ショウやマイ、ルリみたいな選ばれた存在はともかく、一般出身の俺に特別凄そうな『プログレス』は発現しないということだ。
管理者権限で調べたことがあるのだが、それなりに被ることが多い『プログレス』。
成長することで、それらを脱却したいという思いからか名称も変更されるのだ。
「移植はせず、そして私のパーソナリティを取り込んでいない空っぽの『プログレス』。これがあれば、私はもっと強くなれます」
「そう、これ以上は何も言いませんわ。貴方のこの先に、幸あらんことを祈らせていただきますわ」
「……感謝します」
ここで彼女とは別れる。
つまり、外で待ち受ける星敵たちと相対したうえで脱獄を始めなければならない。
まあ、これが創作物などであれば新たな力のお披露目だ……なんて展開になるのか。
実際、【傾界魔王】もそんな期待をしている気がする。
「エクリ」
《御意》
「とりあえず、片づけおいてくれ」
《畏まりました》
頬をぷくっと膨らませ、不機嫌さを伝えてくる【傾界魔王】。
……仕方ないんですよ、だってそこまでこれまでと戦闘スタイル変わってないもん。
◆ □ ◆ □ ◆
邪悪深殿 一層
《──旦那様》
「うん、これはヤバいな」
星が何か細工をしたのだろう、迷宮の中に変化が生じていた。
また、上からガンガンと警鐘を鳴らさせてくる強烈な死の気配──危険過ぎる存在。
「一本道にしたってことかな。確実に途中で逸脱した連中とぶつかるわけだ」
《現在の旦那様は、星敵であり討滅の条件が定められております。充分にご注意を》
「了解。元より「いのちだいじに」は欠かしていないつもりだ」
おそらくそれは、俺を星敵足らしめているアイテムの破壊だろう。
遺製具という器にしたので、壊れてもまあある程度時間が経てば直るのだが。
それを超えるレベルで損壊させたり、供物として捧げれば永久に消滅する。
相手側はそれを意図的に行えばいい──おそらくではあるがな。
こちらもこちらで、盗難対策はしっかりしているはずだが。
相手は星が派遣するような連中だ、警戒を怠ってはいかんな。
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