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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄開始 その29
しおりを挟む「──“■■■■”」
塔の壁面を登る、そのやり方は苛烈な攻撃によって妨げられていた。
ゆえに使うことを決めた切り札、それは人造だからこそ可能となった遺製具。
首から下げていたソレ──勾玉型のアイテムは宣誓と共に形を歪める。
自らの有り様を変え、使用者の──否、提供者の望む姿へと。
「──“呼群波狼”」
空を、大地を、影を奔る狼。
再び世界に宣言した俺の下に集う、様々な種類の狼たち。
その身を以って俺へ放たれる光線を受け、粒子となって消滅していく。
結界の方が耐久度は高い、だが同時に使っているので結界への負担は減っている。
そのうえで、一部の狼たちが塔のあちこちに存在する目に攻撃を行っていた。
ある程度は頑丈だったのかもしれない、だが何千何万という攻撃を受けて潰れていく。
それを指示し、従えているのは狼に所縁を持たないはずの俺。
だがその手には、これまでは手にしていなかった狼を模した長杖が握られている。
「次──“■■■■”」
目をある程度潰したのを確認し、再び最初の宣誓を行う。
狼はその途端に消え、目は改めて俺を狙うようになるのだが──それよりも先に動く。
「──“虚ろう現の幻”、『刮目せよ』」
『■■■■!?』
能力と同時に告げた言葉。
それに驚いた様子の塔──それはそうだろう、突然真っ暗になったはずだから。
嘘から出た実、つまりは嘘を本当にできるというのが“虚ろう現の幻”の効果。
魔力の消費が尋常ではないので、いつの間にか付けていたマスクに手を載せる。
狼が目を潰し、減らしたことで余裕を持って閉ざさせた光線の射出口。
今のうちにと上を目指し、あと二割というところで──再び光線が。
「解除……触手から光が。なるほど、あくまで止めたのは目を開けることだけですしね」
つまり光線を出す場所を、目ではない場所に切り替えれば問題ないということ。
光線を放った直後、撃った触手も焼き焦げていたのでリスクはあるのだろうが。
それでも、今優先されるのは俺を落とすという一点のみ。
──まあ、これしか使えなかったなら不味かったかもしれないな。
「『インストール:デッドウェイト』」
『■■■■■■■■!!』
「では、これで失礼しますよ──『壁からは入れない』」
これまで貯めに貯めた死の貯金。
それをすべて解放することで生み出される重量は、塔にいっさいの抵抗をさせない。
その間に告げるのは、本来当たり前であろう常識──ゆえに言葉は覆り、俺は壁を擦り抜けて内部へと侵入を果たすのだった。
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