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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄開始 その28
しおりを挟む迷宮の最深部、混沌の使徒と使徒が生み出したとされる塔が幅を利かす領域。
俺はその空間をメカトラで閉ざした──隔離された空間に、逃げ場はもう無い。
「さて、まずは──『星水の足袋』」
足に装備していた星具。
その能力は多種多様な水を生み出すというものだが、それは特殊な能力で他にも利便性に長けた能力が搭載されている。
その一つが、上下左右また何も無い場所だろうと踏むこととができること。
正確には、どこでも踏むための力場を生み出すことができる能力だ。
それを発動して踏み出すのは──そびえ立つ塔の壁面、目玉だらけのオブジェクト。
急勾配というか時折形すら歪むソレを、俺は平地を歩くかのように歩んでいく。
『■■ッ!!』
「ははっ、無駄無駄──“星護結界”」
頭に装備したサークレット型のアイテムにより、結界が生成され塔の迎撃を防いだ。
なお、攻撃方法は目からビーム……数が多いし結界侵食してくるしといろいろヤバい。
空間を閉ざした影響で、外部からの供給は抑えたが迷宮を乗っ取って吸い出しているエネルギーは抑えられていないので、結局弱体化しているわけではないからな。
「……『SEBAS』?」
《ハッキング率はおよそ2%かと》
「…………支援量を減らしてもらってそれだと、相当掛かるよなー」
これが“神持祈禱”を使えない理由。
迷宮を掌握することで、脱出と混沌の使徒への妨害を同時に行っていた……問題は、それがほとんど進んでいないこと。
元より星が造った迷宮なので、侵入するまでが非常に面倒なんだとか。
おまけに今は混沌の使徒への対応も必要になっているため、なおのこと遅くなる。
「まあ、それでもやらないと終わらないからな……っと、もう対応を変えてきましたね」
これまではただビームを放射していたが、それを束ねてきた。
単純な手だが、結界はこれまでの均衡を崩され──破壊される。
「……ッ」
《旦那様!》
「大、丈夫だ…………ぷはっ、ただ何度も食らうのはヤバいかな」
精神の保護システムが作動しそうになるぐらい、強力な揺さぶり。
侵食は肉体だけでなく精神にも及ぶが、そちらは事前の対策で抑え込めた。
貫かれた結界はすぐに再構築、その後蘇生薬と万能薬を呷り万全な状態に戻す。
一度食らうだけで酷い汗が流れる……精神的なダメージはリセットしても蓄積するな。
上を仰ぎ見る、塔の最上層まではまだまだ遥か遠く。
このまま歩こうと、あるいは走ったとしても何度か結界は破壊されるだろう。
「切り札を、使いますか」
首から下げたソレは、本当にどうしようもない状況で用いるためのアイテム。
今がその使い時、そう判断した俺はそれを引き千切り──告げる。
「──“■■■■”」
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