虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄開始 その24

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 旗による本格的な支援は抑え、ポーションによる回復での支援を始めた。
 蘇生薬と万能薬、どちらも効果的に星敵たちを癒している。

 気になるのはこの足止めによって得られる時間、それを何に使っているのか。
 だが俺一人で向かったところで解決にはならないので、早急に済ますためにも残る。

「……結局、再び“スィングスパイヤー”を使わされるほどに時間を奪われましたか」

 呟いた通り、災凶種の再現体に混沌の力が加わったため非常に面倒だった足止め個体。
 星敵たちの純粋な火力にも負けず劣らず、それでいてタフさも兼ね揃える面倒臭さ。

 核などの弱点なども無く、純粋な持久戦に持ち込まれてしまった。
 それでも蘇生薬のごり押しで回復を続け、どうにか討伐することに成功する。

「最悪の事態も想定しなければなりません。ですが、それでも向かいましょう」

《旦那様──》

「……仕掛けはあるでしょう。ですが、こちらもまたそれは同じことです」

 先陣は星敵たちに任せ、俺は背後からの奇襲も想定した中央辺りに居る陣形。
 足止め個体以降、何も現れないのは相手の傲慢か──それができないほど忙しいか。

 もう扉は存在しない、歩いて向かうだけでソレは突然見えてきた。
 星敵たちも足を止め、そびえるソレを仰ぎ見ている。

「……なんだ、アレは」

「私も、見たことはありませんね。おそらくは、混沌の使徒──ある神話に関わる代物だとは思うのですが」

 猟奇的、そう捉えるしかないそれは一見すればただの建物かもしれない。
 ファンタジー物によく出てくる、塔みたいな感じである。

 ……だがそこに、目玉なんてついていないだろうしまして塔は怪物など生まない。
 ぼろぼろと零れ落ち、塔の中に入っていくそれらもまた異形の化け物たちだった。

「迷宮の中に迷宮があり、その中にまた建物があるのですか……なんだかややこしくなってきましたね」

《迷宮内に建造物を建てるのはともかく、二重三重と迷宮を構築することはかなり困難です。そこを訪れる者が少なければ、維持費だけでも赤字となってしまいます》

 徴収できるエネルギーは同じなのに、複数迷宮があればその分だけ消費するからな。
 目の前にあるこれが迷宮かと言われれば違うだろうが、相応のコストは必要なはず。

 時間稼ぎをしてまでこれを用意したのは、おそらく迷宮の掌握を進めるため。
 自分たちの神話に関する存在、その核となる物を用意して侵蝕を拡大するのだ。

「……あの娘は、無事でしょうか?」

 その答えもまた、この先にしかない。
 ──どうやら覚悟を、決めなければならないようだ。

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