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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄開始 その21
しおりを挟む恐ろしいまでの支援効果を見せた、【革命英雄】の『プログレス:フラッグフラグ』。
改めて、その成長性について考えさせられるのだった。
「どうやら、決着がついたようですね」
「その旗の効果が凄まじいからな、間もなく掃討も完了するだろう」
「……敵対した星敵の方々は?」
「ある程度ダメージを与えると、勝手に消えていた。おそらく、混沌の使徒が支配する領域があるのだろう」
「……迷宮もすでに掌握されている、ということですか」
俺は戦っていなかったのだが、旗を振り回している間に雇われている星敵たちの戦果を『修羅』が纏めて話してくれる。
どうやら死者は出なかったようだが、代わりに逃げられていたようだ。
本来なら困難な迷宮からの緊急脱出も、迷宮を掌握しておけば簡単になる。
だが、それは本来あり得ないこと。
迷宮の管理者が居ない場所ならともかく、ここは星が管轄する──しかも直接核を守護する彼女が居る場所である。
「だからこその、救援だったのでしょうか」
「どうする、『生者』よ?」
「向かうしかありません……今ならば、道は切り開かれるはずです──メカトラ!」
『ガウッ!』
本来であれば、向こうが入り口を造るのを待つつもりだったが……残念なことにその時が来る前に、混沌の使徒の企みが始まってしまったようだ。
ならばやることはこれまでと同じ、存在しない通路を生み出すためにメカトラを呼ぶ。
その姿は呼び出した時点で鍵に変形しており、すぐさま俺はそれを握り締める。
「──『展虎解放』!」
『おぉおおおお!』
「さぁ、皆さん行きますよ! おそらく、かなり危険が待っているは……ず、です」
『飯ぃいいいい!』
我欲全開な第一陣が、俺の開いた空間の歪みに突っ込んでいく。
その構成員は大半が魔物、ごく一部が人族である……人だって食欲一色な時はあるさ。
「さて、梅雨払いは彼らがやってくれるはずです。我々も状況を把握次第、向かうとしましょうか」
残っている協力者たちに、そう伝える。
ドローンが飛び立ち空間の内部に入ると、その中を映像としてこの場に映し出してくれていた。
そこには──混沌が。
前に訪れた時とは違う、何もかも秩序が崩壊した狂った世界。
「…………やられましたね」
「ああ、間違いなくな」
隣に居る『修羅』も肯定する。
今まではいちおう推定でしかなかった混沌の使徒の暗躍は、この映像によってより確信的なモノとなった。
「…………あの娘は、無事でしょうか?」
内部に入った者たちは心配していない、彼らには実力があるからだ。
問題はそれを有していない、元よりあの場に縛り付けられていた少女。
最悪の状況も、考慮しなければならない。
その覚悟を決め、協力者たちと共に内部へと向かうのだった。
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