虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄開始 その18

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 邪悪深殿 五十層

 直接は来れない五十層、なので一つ前の階層から罠を張りつつ上の層へ。
 地形情報がリセットされていることを確認し、その目的も防衛のためだと推定した。

「……まあ、こうなりますよね」

 本来、この階層はボスとの戦闘を繰り広げるための階層。
 だが現実はどうだろう、すでにボスの姿は無いのに戦いだけが続いている。

 星敵と星敵、あるいは星敵と混沌の使徒の残滓──相容れぬ者たちが戦っていた。
 攻めている側の目的はこの階層、そして迷宮の破壊、守っている側はその守護だ。

 まあ、守っている側の真の目的は、そこではなく大部分が料理なんだろうけど。
 ……あとで何を要求されるか分かったものじゃないが、覚悟だけはしておこう。

「さて、やりますか──『リアクトミー』」

『!!』

 俺が起動したのはハック──『暗天』が発現した『プログレス』。
 本来のそれはタンク職が、強制的に五感のどれかで自分を知覚させるというもの。

 あいつはそれを利用して、即死成功条件を緩和させているのだが。
 俺にそんな暗殺の能力は無いので、本来の用途である意識誘導のために発動した。

 指定した感覚は視覚、すると突然のことに抵抗できなかった星敵たちがこちらを見る。
 狙ったのは俺が雇えなかった星敵たちだけなので、その隙を突く味方の星敵たち。

 すぐに視線は別の方向へ向けられるが、一瞬で状況は大きく変化した。
 だからこそ、視線を逸らすギリギリで向けられる殺意を無視して平然と振る舞う。

「これはこれは、混沌の味方となった皆様がお集まりで。本日はどのような目的でこちらへ? 差し支えなければ──」

「うるせぇ! チッ、どいつもこいつもこんな貧弱野郎に懐柔されやがって……」

「まあ、弱いことに否定はしませんが。それでも、この場所にちょっかいを出すというのであれば、容赦はしませんのでご了承を」

 星敵の一人が噛みついてきたが、毅然とした態度で答える。
 それが癪に障ったのだろう、物凄い速度で近づき──吹き飛ばされた。

「無事か?」

「ええ、ありがとうございました、『修羅』さん」

「……まあ、無用であったな」

「いえいえ、そのお心遣いがありがたいのですよ。傷つかないわけではありませんよ、心も体もね」

 銃と拳で戦う系の星敵『修羅』。
 彼もまた、依頼に応じて手伝いをしてくれていた。

 比率で言うと、味方側の星敵が七割で敵側の星敵が三割。
 足りない部分は、混沌の使徒の力で生み出した軍勢が補っているようだ。

 だが、それでもまだ足りていない。
 先ほどの『霧疫』と言い、いろいろと隠しているからな……警戒は緩められないな。

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