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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄開始 その16
しおりを挟む細菌に操られた休人(抜け殻)たちが、俺に攻撃してくる。
目的が足止めなため、拘束系や封印系の術式や武技が主だっている。
そんな彼らは異なるタイミングで、自らの首筋に注射器を刺し中身を打ち込んでいた。
おどろおどろしいドロッとした液体が注がれると、その効能が瞬時に発揮される。
「! これは……」
「見ての通り、混沌の使徒になった恩恵ってヤツだな。正直、この子たちと違って興味は無いんだが……まっ、使い捨てだしいいだろう別に」
何度か相対している混沌の使徒、その使徒たち──不定形な肉体だったり目や口の数が生物とは明らかに違う異形。
休人たちの肉体には、そんなヤバそうな要素が発現していた。
アバターはそんな容姿にできない、間違いなく先ほどの注射器の影響だ。
「打たれた奴はこんな風に、強制的に混沌の使徒が操れる化け物にできるらしい。まあ、言うことを聞かないから力づくで捻じ伏せないといけないらしいが……俺にそんな実力があるわけないだろう?」
「くっ、出力が跳ね上がりましたね……」
「そりゃあ人を辞めるんだ、リミッターなんて吹っ飛ぶし体が壊れるレベルで暴れたい放題だ。まあ、その分あとで死ぬみたいだけどどうでもいいからな」
「……邪悪ですね」
「邪悪? おいおい、まあたしかに混沌の使徒はそうかもしれないな。だが俺は違う、きちんと区別しているだけだ。うちの可愛い子供たち、この子たちを守るために手段を択ばない──何も間違ってないだろう?」
これだ、俺がこいつを憎み切れない理由。
俺もまた家族を最優先とし、それ以外は切り捨てる覚悟は持ち合わせている……まあ、家族が凄過ぎて機会なんて無いけれど。
こいつもまた同じこと。
たしかに守ろうとする存在は世間一般からすればおかしいだろうが、『霧疫』は本気でそれをやろうとする覚悟がある。
「……ええ、間違ってはいませんね」
「! チッ……」
「だからこそ、私が守りたいと思う者たちのためにも。貴方の覚悟を否定させていただきます──“真海支配”」
休人たちを倒すのは、人工の海水。
体内に大量の海水を流し込み、それを操作することで細菌や混沌の力が体を動かそうと操作できないようにした。
普通ならできないだろうが、今の休人たちは抜け殻状態なのでそれができる。
あとは純粋な操作──『SEBAS』が行えば、必勝だった。
「申し訳ありませんが、そろそろ行かせてもらいますよ」
「……悪いとも思わないが、そう簡単に行かせるわけないだろう」
「ええ、ですので勝手に向かいます。お気になさらなず──『回帰の海』」
先んじて海水を周囲に展開し、細菌を封じたうえで転移陣のすぐ近くに転移。
妨害が行われるより先に、それを踏んで迷宮の奥へ──ここから逃げれば勝ちだしな。
……だからこそ、『霧疫』がニヤついている様子を俺は見ることができなかった。
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※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
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