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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄開始 その14
しおりを挟む相手にするのが面倒、そういった意味でヤバいヤツが立ちはだかる。
混沌の使徒でもある『霧疫』、彼は休人の抜け殻を使役できるようになっていた。
「こいつらの体、結構便利なんだぜ。適正値は半端ないし、使い潰しても処分が楽。まあ消えちまうから、この子以外が増えるのは一度切りになっちまうんだけどな」
「……それが、これのからくりですか」
「ああ。リアって言うんだ、仲良くしてくれると俺も嬉しい」
女の子の紹介をしているみたいだが、実際に彼が俺へ見せているのは試験管だ。
その中で蠢く目に見えない細菌、それこそが休人のアバターを操るナニカの正体。
この男、『霧疫』はかつて武闘世界で創薬術を極めた男だった。
……武を極める世界の異端者は、やがてその腕で達人を殺し尽くすことに。
まあその結果星敵となり、最上位の武人集団『極逸』によって討伐。
封印されたここに収監されたのだが……厄介なのは、星敵となったことで得た力。
創薬術だったものが、創厄──つまり厄を創るという能力になっている。
おまけに武人を殺しまくって条件を満たした結果、【死疫王】なんて職も得ていた。
「そのリアという細菌が、この辺りにはまき散らされているわけですね」
「おいおい、そんな言い方ないだろう。リアが可哀そうじゃないか……! まあ、それは否定しないがな。どうせお前さんには効かないだろうが、こいつらを操るには充分だ」
「本当に厄介な……っと、さっそくですか」
「時間を掛けると面倒だしな、逃げられる前に足止め開始だ」
なお、『霧疫』自体の戦闘力はそこまで高くは無い。
細菌も死に特化しており、それを利用した自己強化や回復などはほぼ不可能。
おまけに細菌を増やすのにも死体が必要という、面倒な縛りがあるため普通なら強くなる前に潰して終われるのだが……今の時代は事情がいろいろ違うからな。
──当然、それは休人の存在だ。
死んでも消える俺たちの体は、死体としての使い道を取れず細菌を増やすことには使えない……どうやらリアと呼ばれる細菌は例外のようだが、他は大量に増やせない。
「だからこそ、彼らを解放することが救済となるのでしょう──『焼殺の灯油』!」
周囲に油を撒くと同時、“極小火”を発動して即着火。
途端に燃え盛る業火が、容赦なく休人たちのアバターを焼き尽くしていく。
彼らの対処は大きく分けて二つ。
片方のグループは魔技やら武技を使い、ニヤついている『霧疫』の守護。
そしてもう一つのグループは、火に炙られようとお構いなしに、俺の方へ文字通り突貫してくる──が灯油の炎は彼らを舐め取り、誰一人として俺の下には届かない。
細菌がこれで殺せるかは分からないが、汚物は消毒と言って焼くのは定番。
セオリー通りにやってはみたが、まだまだ相手は手の内を隠しているんだよな。
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