虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,283 / 2,812
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄開始 その11

しおりを挟む


 なんだか現実方面の、それこそ精神保護系のことについて考えてしまう。
 仮初の器だからこそ、本物を使う精神関係は念入りに守られているのだ。

「…………変化は無いものだな」

 あっさりと、何もない日々は経過する。
 つまりは数日後、いつもと同じように休人たちに行動の一つひとつを見張られながら俺は街を歩いていた。

 彼らはたまに星敵たちに混ざり、俺の作る料理を頬張っていたりする。
 だからだろうか、[掲示板]でのその情報は誤情報が多く混ざっていた。

「……美味しいけどバフ効果が低い。まあ、一部はそうだけども」

 安いメニューに関しては、相応に得られるバフの効果を落としてある。
 彼の休人もあえて、その情報のみを選んで提出したのだろう……許可を求めてきたし。

 だが実際には、安い物と高い物とでバフの量に違いが存在する。
 最初の頃は安い物しか頼めなかった休人たちも、だんだん高い物に手を出していた。

 聞いた話によると、料理バフ込みでようやくギリギリ戦闘ができるとのこと。
 ……迷宮の話ではない、それは星敵たちとの戦闘についてだ。 

 どうやらある程度仲良くなると、戦ってくれるようになるのだとか。
 まあ、当人たちがそう思っているだけで、実際にどう思われているかは別として。

 数人、あるいは数十人で挑み──いつも敗北している休人たち。
 だがダメージを与えると、何かしらの報酬が得られるのだとか。

 魔物の星敵であれば素材を、人の星敵であれば当人に関する能力の一部を。
 後者はかなり難易度が高いらしく、基本的には魔物の星敵に集中しているようだが。

「生え代わりとか、そういう時期的なものでくれているだけだろうな…………俺はもう、いろいろと貰ったからいいけど」

 最初の頃はこの監獄特有の金も集まっておらず、物々交換を仕掛ける魔物が多かった。
 そして、物も無い中で差し出せるものとなれば限られてくるわけで──

 食べ物に釣られた魔物の星敵たちは、自らのレア素材を俺に押し付けてきた。
 俺も俺で一種類ずつは欲しかったので、それを快諾して食べ物を渡していたものだ。

「まあ、一日数個限定とかそういうことをしてたら、逆鱗とか貰っちゃったけど……若干の罪悪感があったな」

 そういう弱点っぽい場所も、採取できるし時間経過で再生することは知っていた。
 同じようなことを、俺はアイスプルで常に経験しているからな。

 今はそうして得たアイテムを、複製することで恒常的に得られるようにした。
 彼らと需要が被ることはない……が、それはそれで問題があるのだよな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

強制力がなくなった世界に残されたものは

りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った 令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達 世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか その世界を狂わせたものは

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

「おまえを愛することはない!」と言ってやったのに、なぜ無視するんだ!

七辻ゆゆ
ファンタジー
俺を見ない、俺の言葉を聞かない、そして触れられない。すり抜ける……なぜだ? 俺はいったい、どうなっているんだ。 真実の愛を取り戻したいだけなのに。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

投獄された聖女は祈るのをやめ、自由を満喫している。

七辻ゆゆ
ファンタジー
「偽聖女リーリエ、おまえとの婚約を破棄する。衛兵、偽聖女を地下牢に入れよ!」  リーリエは喜んだ。 「じゆ……、じゆう……自由だわ……!」  もう教会で一日中祈り続けなくてもいいのだ。

処理中です...