虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,282 / 2,815
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄開始 その10

しおりを挟む


 星敵という最高峰の戦力が挑んでも、未だに攻略が終わらない(推定)100層の難関迷宮『邪悪深殿』。

 俺と『SEBAS』は、もし普通の手段で挑み続けても終わりが無い──つまりループ式のエンドコンテンツみたいな仕掛けがあるのでは、と予測していた。

「だからこそ一刻も早く、あの子と再会する必要があるんだが…………現実は残酷だな」

 攻略は星敵たちが勝手にやっているし、深層(仮)へのアプローチは情報屋が信用できる相手に試してもらっているらしい……つまり、俺個人でやる必要がまったく無い。

 もちろん、俺自身が打って出てそれらに参加するという手も無いわけじゃないのだが、後者はともかく前者の方は休人たちも徒党を組んで行っているからな。

 固有種なども放逐されている関係で、当然倒せば誰であろうと力を得られる。
 人種であれば遺製具、魔物の星敵であってもリソースの増量などが見込めるのだ。

「まさに星からの試練、倒せば報酬を得られるって意味じゃ星敵と同じだしな。今は集団で行かないと全滅する休人組だけど、そのうちソロ攻略を目指す奴なんかも出てくるかもしれないな」

 死んで覚えて、それを繰り返すことができるのが休人の最大の特徴だ。
 蘇生薬でこちらの人々もできなくもないのだが、一番の違いはやはり死への忌避感。

 いかに生き返れる、といっても死そのものは一瞬だろうと自分を支配するものだ。
 原人たちの中には、それを受け入れられず蘇生後にトラウマを覚えてしまう者がいる。

 だが、対して休人はゲームという認識が強く、この世界での死が現実での死ではないことを知っている──またシステムによる精神ダメージの緩和が、忌避感を和らげていた。

 ある意味、倫理観の枷が外れている狂った化け物──休人の中には、そう捉えられてもおかしくはないスタイルで活動をしている者たちが居る……ストレス発散かもな。

「さすがにそれは、『プログレス』でも再現できなかったからな。[メニュー]と違ってどちらかといえば、VR機器本体に備わっている機構だし」

 緊急時における強制的な[ログアウト]然り、ゲーム内での強い影響を現実に持ち出さないように対策がしっかり講じられており、EHOにもそれはきちんと機能している。

 うちの子供たちもやっているように、年齢制限が低いので対策の方も念入りだ。
 俺がだいぶ前、G……名前も言いたくないアイツに遭遇した時の視覚情報緩和もそう。

 俺は自前というか『SEBAS』がやってくれたが、本来であれば設定を組み込み忌避する生物が現れたらぬいぐるみみたくデフォルメしたり、似た何かにしてくれる。

 そうして脳への深刻なダメージを和らげ、強制的に[ログアウト]するような事態を可能な限り減らしているのだ──そういうことが続くと、会社の方も責められるからな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました

下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。 ご都合主義のSS。 お父様、キャラチェンジが激しくないですか。 小説家になろう様でも投稿しています。 突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!

公爵家三男に転生しましたが・・・

キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが… 色々と本当に色々とありまして・・・ 転生しました。 前世は女性でしたが異世界では男! 記憶持ち葛藤をご覧下さい。 作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。

【完結】会いたいあなたはどこにもいない

野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。 そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。 これは足りない罪を償えという意味なのか。 私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。 それでも償いのために生きている。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜

クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。 生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。 母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。 そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。 それから〜18年後 約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。 アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。 いざ〜龍国へ出発した。 あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね?? 確か双子だったよね? もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜! 物語に登場する人物達の視点です。

14歳までレベル1..なので1ルークなんて言われていました。だけど何でかスキルが自由に得られるので製作系スキルで楽して暮らしたいと思います

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕はルーク 普通の人は15歳までに3~5レベルになるはずなのに僕は14歳で1のまま、なので村の同い年のジグとザグにはいじめられてました。 だけど15歳の恩恵の儀で自分のスキルカードを得て人生が一転していきました。 洗濯しか取り柄のなかった僕が何とか楽して暮らしていきます。 ------ この子のおかげで作家デビューできました ありがとうルーク、いつか日の目を見れればいいのですが

聖女の力を隠して塩対応していたら追放されたので冒険者になろうと思います

登龍乃月
ファンタジー
「フィリア! お前のような卑怯な女はいらん! 即刻国から出てゆくがいい!」 「え? いいんですか?」  聖女候補の一人である私、フィリアは王国の皇太子の嫁候補の一人でもあった。  聖女となった者が皇太子の妻となる。  そんな話が持ち上がり、私が嫁兼聖女候補に入ったと知らされた時は絶望だった。  皇太子はデブだし臭いし歯磨きもしない見てくれ最悪のニキビ顔、性格は傲慢でわがまま厚顔無恥の最悪を極める、そのくせプライド高いナルシスト。  私の一番嫌いなタイプだった。  ある日聖女の力に目覚めてしまった私、しかし皇太子の嫁になるなんて死んでも嫌だったので一生懸命その力を隠し、皇太子から嫌われるよう塩対応を続けていた。  そんなある日、冤罪をかけられた私はなんと国外追放。  やった!   これで最悪な責務から解放された!  隣の国に流れ着いた私はたまたま出会った冒険者バルトにスカウトされ、冒険者として新たな人生のスタートを切る事になった。  そして真の聖女たるフィリアが消えたことにより、彼女が無自覚に張っていた退魔の結界が消え、皇太子や城に様々な災厄が降りかかっていくのであった。

処理中です...