虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄開始 その08

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 情報屋とのやり取りを終えた俺を、襲撃してきた休人。
 合法戦闘のために持ち掛けた[PvP]を断り、無視して歩き出す。

「だから、逃がさね──!?」

「おや? 追いかけてこないのならば、そのまま行きますよ」

「ぐっ、この……何をしやがった!」

「いえいえ、特に何も。それでは、またの機会にお会いしましょう……まあ、会うつもりはございませんが」

「くっそおおお!」

 悠々と歩く俺を、顔を真っ赤にして見逃す休人──まるでその場に縫い付けられているかのように、硬直した体はピクリともせず。

 ネタ晴らしをしてしまえば、エクリが俺の影で待機していた。
 あとは所定の位置に来た時点で、影を操作して動きを止めるだけ。

 相手はスペックもといレベルは高いので、そちらも対応済み。
 今回は『影踏靴[カゲフミ]』を渡し、そちらの効果も使ってもらっていた。

「──成功だな」

《エクリに旦那様の権限を付与するとは、さすがの発想です》

「うーん、創作物だと良くある話だからな。個人承認の成り代わり、それによる突破は」

 遺製具レリックは本来、獲得者のみが使える。
 唯一、死後の継承(?)は可能なのだが、死なない休人はそれに該当せず、当然俺が得た遺製具は俺以外に使うことはできない。

 前回はエクリを俺が操縦することで、権限的に問題ない状態を作った。
 だが今回は完全にエクリとして、それでいて俺の権限を持って使っている。

 端的に言ってしまえば、IDのコピー。
 世界のシステムに干渉し、エクリを休人である『ツクル』として誤認させることで、一時的に使用権限を与えていたのだ。

 まあ、当然簡単なことではない。
 それこそ『プログレス』の中でも、かなり成長した能力があったからこそできたこと、普通に『超越者』の権能レベルのやり口だ。

「誰かに成り代わるとか、自分を誰かに刻むとかとんでもないパーソナリティだよな……うん、俺には到底理解できない」

 少なくとも、ルリ関連の事柄以外に特別なイベントを経験したことのない、ごくごくありふれた一般ピーポーである俺には。

 ……これを言ったら、タクマ辺りにはジト目を向けられるだろうけど。
 少なくとも、『プログレス』が読み取る俺の願望はそういった類では無いはずだ。

「いっそのこと、俺も【傾界魔王】みたいに権能を取り外してみれば…………なあ、これやったら──」

《はい、『騎士王』が可能とするでしょう。またその方法もかなり厳しいもので、現状の維持をオススメします》

「『SEBAS』がそういうってことは、本当にヤバいんだな……うん、やめとこう」

 星敵としての権能、それは『超越者』たちとある意味同種のもの。
 もしそれを切り離し、『プログレス』と併用出来たら…………俺以外だと凄惨だしな。

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