2,280 / 2,815
DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄開始 その08
しおりを挟む情報屋とのやり取りを終えた俺を、襲撃してきた休人。
合法戦闘のために持ち掛けた[PvP]を断り、無視して歩き出す。
「だから、逃がさね──!?」
「おや? 追いかけてこないのならば、そのまま行きますよ」
「ぐっ、この……何をしやがった!」
「いえいえ、特に何も。それでは、またの機会にお会いしましょう……まあ、会うつもりはございませんが」
「くっそおおお!」
悠々と歩く俺を、顔を真っ赤にして見逃す休人──まるでその場に縫い付けられているかのように、硬直した体はピクリともせず。
ネタ晴らしをしてしまえば、エクリが俺の影で待機していた。
あとは所定の位置に来た時点で、影を操作して動きを止めるだけ。
相手はスペックもといレベルは高いので、そちらも対応済み。
今回は『影踏靴[カゲフミ]』を渡し、そちらの効果も使ってもらっていた。
「──成功だな」
《エクリに旦那様の権限を付与するとは、さすがの発想です》
「うーん、創作物だと良くある話だからな。個人承認の成り代わり、それによる突破は」
遺製具は本来、獲得者のみが使える。
唯一、死後の継承(?)は可能なのだが、死なない休人はそれに該当せず、当然俺が得た遺製具は俺以外に使うことはできない。
前回はエクリを俺が操縦することで、権限的に問題ない状態を作った。
だが今回は完全にエクリとして、それでいて俺の権限を持って使っている。
端的に言ってしまえば、IDのコピー。
世界のシステムに干渉し、エクリを休人である『ツクル』として誤認させることで、一時的に使用権限を与えていたのだ。
まあ、当然簡単なことではない。
それこそ『プログレス』の中でも、かなり成長した能力があったからこそできたこと、普通に『超越者』の権能レベルのやり口だ。
「誰かに成り代わるとか、自分を誰かに刻むとかとんでもないパーソナリティだよな……うん、俺には到底理解できない」
少なくとも、ルリ関連の事柄以外に特別なイベントを経験したことのない、ごくごくありふれた一般ピーポーである俺には。
……これを言ったら、タクマ辺りにはジト目を向けられるだろうけど。
少なくとも、『プログレス』が読み取る俺の願望はそういった類では無いはずだ。
「いっそのこと、俺も【傾界魔王】みたいに権能を取り外してみれば…………なあ、これやったら──」
《はい、『騎士王』が可能とするでしょう。またその方法もかなり厳しいもので、現状の維持をオススメします》
「『SEBAS』がそういうってことは、本当にヤバいんだな……うん、やめとこう」
星敵としての権能、それは『超越者』たちとある意味同種のもの。
もしそれを切り離し、『プログレス』と併用出来たら…………俺以外だと凄惨だしな。
0
お気に入りに追加
646
あなたにおすすめの小説

侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
どうも、死んだはずの悪役令嬢です。
西藤島 みや
ファンタジー
ある夏の夜。公爵令嬢のアシュレイは王宮殿の舞踏会で、婚約者のルディ皇子にいつも通り罵声を浴びせられていた。
皇子の罵声のせいで、男にだらしなく浪費家と思われて王宮殿の使用人どころか通っている学園でも遠巻きにされているアシュレイ。
アシュレイの誕生日だというのに、エスコートすら放棄して、皇子づきのメイドのミュシャに気を遣うよう求めてくる皇子と取り巻き達に、呆れるばかり。
「幼馴染みだかなんだかしらないけれど、もう限界だわ。あの人達に罰があたればいいのに」
こっそり呟いた瞬間、
《願いを聞き届けてあげるよ!》
何故か全くの別人になってしまっていたアシュレイ。目の前で、アシュレイが倒れて意識不明になるのを見ることになる。
「よくも、義妹にこんなことを!皇子、婚約はなかったことにしてもらいます!」
義父と義兄はアシュレイが状況を理解する前に、アシュレイの体を持ち去ってしまう。
今までミュシャを崇めてアシュレイを冷遇してきた取り巻き達は、次々と不幸に巻き込まれてゆき…ついには、ミュシャや皇子まで…
ひたすら一人づつざまあされていくのを、呆然と見守ることになってしまった公爵令嬢と、怒り心頭の義父と義兄の物語。
はたしてアシュレイは元に戻れるのか?
剣と魔法と妖精の住む世界の、まあまあよくあるざまあメインの物語です。
ざまあが書きたかった。それだけです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】会いたいあなたはどこにもいない
野村にれ
恋愛
私の家族は反乱で殺され、私も処刑された。
そして私は家族の罪を暴いた貴族の娘として再び生まれた。
これは足りない罪を償えという意味なのか。
私の会いたいあなたはもうどこにもいないのに。
それでも償いのために生きている。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

龍王の番〜双子の運命の分かれ道・人生が狂った者たちの結末〜
クラゲ散歩
ファンタジー
ある小さな村に、双子の女の子が生まれた。
生まれて間もない時に、いきなり家に誰かが入ってきた。高貴なオーラを身にまとった、龍国の王ザナが側近二人を連れ現れた。
母親の横で、お湯に入りスヤスヤと眠っている子に「この娘は、私の○○の番だ。名をアリサと名付けよ。
そして18歳になったら、私の妻として迎えよう。それまでは、不自由のないようにこちらで準備をする。」と言い残し去って行った。
それから〜18年後
約束通り。贈られてきた豪華な花嫁衣装に身を包み。
アリサと両親は、龍の背中に乗りこみ。
いざ〜龍国へ出発した。
あれれ?アリサと両親だけだと数が合わないよね??
確か双子だったよね?
もう一人の女の子は〜どうしたのよ〜!
物語に登場する人物達の視点です。
結婚しても別居して私は楽しくくらしたいので、どうぞ好きな女性を作ってください
シンさん
ファンタジー
サナス伯爵の娘、ニーナは隣国のアルデーテ王国の王太子との婚約が決まる。
国に行ったはいいけど、王都から程遠い別邸に放置され、1度も会いに来る事はない。
溺愛する女性がいるとの噂も!
それって最高!好きでもない男の子供をつくらなくていいかもしれないし。
それに私は、最初から別居して楽しく暮らしたかったんだから!
そんな別居願望たっぷりの伯爵令嬢と王子の恋愛ストーリー
最後まで書きあがっていますので、随時更新します。
表紙はエブリスタでBeeさんに描いて頂きました!綺麗なイラストが沢山ございます。リンク貼らせていただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる