105 / 2,831
DIY、冒険を求める
貢献イベント その04
しおりを挟む『しかし、それはあくまでかつての名。今の我はただの血気盛んな魔物だ。勇者の封印を破った今では、『超越者』以外に我を倒せる者はいないだろう。……さあ『聖者』よ、我にその実力を魅せてくれ!』
「…………」
イピリア、その名が俺の頭から離れない。
それは、地球においてアボリジニが崇拝していた精霊のことであった。
髪と髭を持った虹色のヤモリ。
一年に一度大雨を降らし、雨季を告げて大地へと豊穣を齎す。
鳴き声は雷鳴とされ、生息地は立ち入りを禁忌とする神聖な聖域とすら考えられた。
一部が異なっているとはいえ、確かに目の前の魔物は自身をイピリアと名乗っている。
それはつまり、そんな伝承を残す精霊を相手にしなければいけないということだ。
(……いや、ただの巨大ヤモリだったなら毒でも使えば勝てた。だけど、精霊だから通じるかどうか分からないんだよなー)
大体、精霊に毒を使ったっていう伝承を聞いたことがないぞ。
毒をセコイ、なんて言って暴れられても困るし……今回は控えておくか。
「えっと、闘い……ですか?」
『しかり。我に絡みつく瘴気は、強者の血に飢えている。我はその衝動を抑えられなくてな、すまないが殺らせてくれ』
「…………ハァ、分かりました」
俺も覚悟を決めた。
今まで着ていた作業服を脱ぎ、作っておいた白装束を身に纏う。
……ほら、もう儀式みたいなもんだろう?
「準備、できました」
『……何らかの力が宿っているな。面白い、どういったものか試させてもらおう』
黒いイピリアは瘴気を一気に解放して、俺の元へと一瞬で向かって来る。
──そして、俺の首に噛み千切った。
◆ □ ◆ □ ◆
(……おかしい、確実に首を千切ったはず。実際、今も首は口の中ですり潰されている)
ソレは、たしかにツクルを殺した……のだが、妙な不安感に苛まれていた。
ツクルは死んだ、それは自身の口内にある首が物語っている。
そのはずだが、いつまで経っても勝ったという感覚が訪れない。
(……ッ! やはり、まだであったか!)
「──いやー、一撃でしたね。ですが、コンテニューいたしましたので、もう一d──」
(……やはり、駄目か)
殺したはずの男は、淡い光と共に元いた場所に現れる。
再度攻撃を行うが、結果は同じであった。
「まさか、セリフの最中に攻撃されるとは。それはちょっと、どうかと思うのですが」
「……なぜだ、なぜ死なない」
「それを答えては、私は貴方に殺されてしまいます。まあ、『生者』らしい能力とでも、言っておきましょうか」
(『聖者』らしい……だと。ならば、肉体に無限の再生力を? いや、勇者と共に居た聖女も、それは不可能だった。聖属性を極めた者が不可能なそれは、いかに『聖者』といえども何度もできるはずがない。……どれ、虱潰しに試してみるか)
ソレはツクルの能力を暴くため、あらゆる方法を試すことにした。
20
お気に入りに追加
648
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判
七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。
「では開廷いたします」
家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
Anotherfantasia~もうひとつの幻想郷
くみたろう
ファンタジー
彼女の名前は東堂翠。
怒りに震えながら、両手に持つ固めの箱を歪ませるくらいに力を入れて歩く翠。
最高の一日が、たった数分で最悪な1日へと変わった。
その要因は手に持つ箱。
ゲーム、Anotherfantasia
体感出来る幻想郷とキャッチフレーズが付いた完全ダイブ型VRゲームが、彼女の幸せを壊したのだ。
「このゲームがなんぼのもんよ!!!」
怒り狂う翠は帰宅後ゲームを睨みつけて、興味なんか無いゲームを険しい表情で起動した。
「どれくらい面白いのか、試してやろうじゃない。」
ゲームを一切やらない翠が、初めての体感出来る幻想郷へと体を委ねた。
それは、翠の想像を上回った。
「これが………ゲーム………?」
現実離れした世界観。
でも、確かに感じるのは現実だった。
初めて続きの翠に、少しづつ増える仲間たち。
楽しさを見出した翠は、気付いたらトップランカーのクランで外せない大事な仲間になっていた。
【Anotherfantasia……今となっては、楽しくないなんて絶対言えないや】
翠は、柔らかく笑うのだった。

【完結】『飯炊き女』と呼ばれている騎士団の寮母ですが、実は最高位の聖女です
葉桜鹿乃
恋愛
ルーシーが『飯炊き女』と、呼ばれてそろそろ3年が経とうとしている。
王宮内に兵舎がある王立騎士団【鷹の爪】の寮母を担っているルーシー。
孤児院の出で、働き口を探してここに配置された事になっているが、実はこの国の最も高貴な存在とされる『金剛の聖女』である。
王宮という国で一番安全な場所で、更には周囲に常に複数人の騎士が控えている場所に、本人と王族、宰相が話し合って所属することになったものの、存在を秘する為に扱いは『飯炊き女』である。
働くのは苦では無いし、顔を隠すための不細工な丸眼鏡にソバカスと眉を太くする化粧、粗末な服。これを襲いに来るような輩は男所帯の騎士団にも居ないし、聖女の力で存在感を常に薄めるようにしている。
何故このような擬態をしているかというと、隣国から聖女を狙って何者かが間者として侵入していると言われているためだ。
隣国は既に瘴気で汚れた土地が多くなり、作物もまともに育たないと聞いて、ルーシーはしばらく隣国に行ってもいいと思っているのだが、長く冷戦状態にある隣国に行かせるのは命が危ないのでは、と躊躇いを見せる国王たちをルーシーは説得する教養もなく……。
そんな折、ある日の月夜に、明日の雨を予見して変装をせずに水汲みをしている時に「見つけた」と言われて振り向いたそこにいたのは、騎士団の中でもルーシーに優しい一人の騎士だった。
※感想の取り扱いは近況ボードを参照してください。
※小説家になろう様でも掲載予定です。

てめぇの所為だよ
章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。
『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる