上 下
2,268 / 2,723
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄計画 その26

しおりを挟む


 監獄の中で増えつつある休人たち。
 だが彼らは思うように動けていない……いろんな意味で、力が足りないのだ。

「まあ、ここでいろいろと完結しているから困りはしないだろうけど。娯楽的な飢えも、別に[ログアウト]すればいいだけだし」

 特定の地域でしか就けない職業、得られないアイテムなどもこの監獄では手に入る。
 それは監獄内で行われるイベントで、ある程度活躍すると得られる物と引き換えだ。

 他者から奪うことは(ここだと物理的な意味でも)不可能だが、取引は可能。
 俺は料理を作るときなどに、特別メニューや優先して調理するなどして稼いでいる。

 文句があるなら自分も同じようにすればいい、そしてその結果に文句を言わせないだけの出来をこれまで保障してきた──だからこそ、星敵でもあっても取引が成立するのだ。

「けどまあ、いい加減に連中をどうにかしないといけないんだよな……」

 家が割れた。
 物理的に、ではなく比喩的に。
 要は休人たちに家の場所を知られてしまった結果、連日家の戸が叩かれている。

 初めの内は強硬策で家を攻撃してきたものだが、それはアウト──この街の規則に引っかかるため、星敵たちが合法的に狩りができると喜んで彼らを蹂躙してくれた。

 休人たちには懸賞金……じゃなくて懸賞飯が掛かっている。
 倒した数、または質(合計レベル)に応じたランク別の料理が振る舞われるのだ。

 当然、発案者も実行者も俺。
 彼らを懐柔して、怪獣たちにやってもらっていた……うん、お後がよろしいようで。

「エクリ、ちょっと考え事がしたいから掃除してきてくれ」

《──了解しました、創者様》

 注文してしばらく、家の外に静けさが取り戻された。
 決して、洒落がダジャレだと察したからではない……八つ当たりではないのだ。

《清掃、完了しました》

「ありがとう……『SEBAS』」

《神殿は現在、不活性化状態です》

「盗聴は無い……かな? よし、今しかないな。休人云々でだいぶ気も逸れただろうし、情報もきちんと仕入れた。実行するなら早いに越したことは無い」

 情報屋との取引は、今も続いている。
 中には『邪悪深殿』の攻略状況なども含まれていて……ある時、その中に興味深いものが載っていた。

 迷宮の層は全部で百。
 そして、問題となるモノが存在するのは間である五十層。

 脱出自体には更にもう五十層重ねなければならないのだが、上からも下からも探索者が現れる関係なのか、その中間地点こそが一番厄介な場所とのこと。

 ──ある意味、星々がこの迷宮を築き上げた理由ともいえるもの……厄介モノが存在しているらしい。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と叫んだら長年の婚約者だった新妻に「気持ち悪い」と言われた上に父にも予想外の事を言われた男とその浮気女の話

ラララキヲ
恋愛
 長年の婚約者を欺いて平民女と浮気していた侯爵家長男。3年後の白い結婚での離婚を浮気女に約束して、新妻の寝室へと向かう。  初夜に「俺がお前を抱く事は無い!」と愛する夫から宣言された無様な女を嘲笑う為だけに。  しかし寝室に居た妻は……  希望通りの白い結婚と愛人との未来輝く生活の筈が……全てを周りに知られていた上に自分の父親である侯爵家当主から言われた言葉は──  一人の女性を蹴落として掴んだ彼らの未来は……── <【ざまぁ編】【イリーナ編】【コザック第二の人生編(ザマァ有)】となりました> ◇テンプレ浮気クソ男女。 ◇軽い触れ合い表現があるのでR15に ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾は察して下さい… ◇なろうにも上げてます。 ※HOTランキング入り(1位)!?[恋愛::3位]ありがとうございます!恐縮です!期待に添えればよいのですがッ!!(;><)

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

【完結】父が再婚。義母には連れ子がいて一つ下の妹になるそうですが……ちょうだい癖のある義妹に寮生活は無理なのでは?

つくも茄子
ファンタジー
父が再婚をしました。お相手は男爵夫人。 平民の我が家でいいのですか? 疑問に思うものの、よくよく聞けば、相手も再婚で、娘が一人いるとのこと。 義妹はそれは美しい少女でした。義母に似たのでしょう。父も実娘をそっちのけで義妹にメロメロです。ですが、この新しい義妹には悪癖があるようで、人の物を欲しがるのです。「お義姉様、ちょうだい!」が口癖。あまりに煩いので快く渡しています。何故かって?もうすぐ、学園での寮生活に入るからです。少しの間だけ我慢すれば済むこと。 学園では煩い家族がいない分、のびのびと過ごせていたのですが、義妹が入学してきました。 必ずしも入学しなければならない、というわけではありません。 勉強嫌いの義妹。 この学園は成績順だということを知らないのでは?思った通り、最下位クラスにいってしまった義妹。 両親に駄々をこねているようです。 私のところにも手紙を送ってくるのですから、相当です。 しかも、寮やクラスで揉め事を起こしては顰蹙を買っています。入学早々に学園中の女子を敵にまわしたのです!やりたい放題の義妹に、とうとう、ある処置を施され・・・。 なろう、カクヨム、にも公開中。

(完結)私は家政婦だったのですか?(全5話)

青空一夏
恋愛
夫の母親を5年介護していた私に子供はいない。お義母様が亡くなってすぐに夫に告げられた言葉は「わたしには6歳になる子供がいるんだよ。だから離婚してくれ」だった。 ありがちなテーマをさくっと書きたくて、短いお話しにしてみました。 さくっと因果応報物語です。ショートショートの全5話。1話ごとの字数には偏りがあります。3話目が多分1番長いかも。 青空異世界のゆるふわ設定ご都合主義です。現代的表現や現代的感覚、現代的機器など出てくる場合あります。貴族がいるヨーロッパ風の社会ですが、作者独自の世界です。

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

Ancient Unfair Online ~万能武器ブーメラン使いの冒険記~

草乃葉オウル
ファンタジー
『Ancient Unfair Online(エンシェント アンフェア オンライン)』。 それは「不平等」をウリにした最新VRMMORPG。 多くの独自スキルやアイテムにイベントなどなど、様々な不確定要素が織りなすある意味自由な世界。 そんな風変わりな世界に大好きなブーメランを最強武器とするために飛び込む、さらに風変わりな者がいた! レベルを上げ、スキルを習得、装備を強化。 そして、お気に入りの武器と独自の戦闘スタイルで強大なボスをも撃破する。 そんなユニークなプレイヤーの気ままな冒険記。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

公爵令嬢はアホ係から卒業する

依智川ゆかり
ファンタジー
『エルメリア・バーンフラウト! お前との婚約を破棄すると、ここに宣言する!!」  婚約相手だったアルフォード王子からそんな宣言を受けたエルメリア。  そんな王子は、数日後バーンフラウト家にて、土下座を披露する事になる。   いや、婚約破棄自体はむしろ願ったり叶ったりだったんですが、あなた本当に分かってます?  何故、私があなたと婚約する事になったのか。そして、何故公爵令嬢である私が『アホ係』と呼ばれるようになったのか。  エルメリアはアルフォード王子……いや、アホ王子に話し始めた。  彼女が『アホ係』となった経緯を、嘘偽りなく。    *『小説家になろう』でも公開しています。

処理中です...