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DIY、監獄ライフに勤しむ
脱獄計画 その09
しおりを挟む迷宮から出ようとした俺は、突如として謎の空間に飛ばされた。
そこには巨大な目玉が一つ、そして問われたのは──
『──キミハ、コントンハスキカイ?』
脳に直接伝わってくるそれは、意味を瞬時には理解できない……はずの文字の羅列。
だがたしかに──『混沌』、その言葉だけははっきりと伝わってきた。
「混沌、ですか……」
『ウソイツワリナク、ソッチョクナカンソウガホシイカナ? アア、フカイナコタエダカラッテテヲダシタリハシナイヨ』
「では、お望みの通り率直な感想を──私個人としては、好きですね。ただし、家族を巻き込むのであればお断りですがね」
『……フーン、リユウヲキイテモ?』
手を出さないと言っていたはずなのだが、少々目玉が血走っている気がする。
煽り耐性、どうなっているのだろうか……まあ、説明はしておくけど。
「混沌、というよりも規律や決まりに縛られない生き方、ですかね? 私の家族がそれらの影響で望まぬ選択を強いられる。そのようなことさえなければ、混沌もいいでしょう」
『ツマリ、カゾク……マモルベキソンザイサエイナケレバ、サンドウシテクレルト?』
「──あ、いえ、そのようなことをお考えになられる方とは、相容れませんのでお断りですかね?」
『──ア゛ァ!?』
目玉がギョロリとこちらを睨みつける。
血走った眼が向ける視線は、文字通り人を殺す死線だった。
「守るべき者が居るのは弱くなること、そう言う人がいるのは百も承知です。それでも、私は平穏を願います……」
『グヌヌヌ……モウイイ!』
「っ……!?」
目玉が瞬きを一つ、すると何も無かった空間が切り替わったかのように突如として変化していた。
そこはうじゃうじゃと触手が、目玉が、そして■■■■──
「あっ、ヤバ──」
『■■■■■■■■■■■■■■■■!!』
ことばが、いみが、せかいをにんしき、できな……したくない──。
『!?』
□ ◆ □ ◆ □
──『プログレス:クロノトリガー』。
それは行動を予約する、そんな効果を秘めた『プログレス』。
条件を指定しておき、それが満たされると自分の認識に関係無く発動する。
だからこそ、望まぬタイミングで起動してしまうこともあるデメリット付き。
そんな制約があるのだが、発動条件を厳しくしておけばそれだけで問題は無くなる。
今回の場合、条件は『強制[ログアウト]が発生するレベルの精神負荷』。
相手が侵略者か宇宙的恐怖の使者であると分かった時点で、これを条件にしておいた。
そして、それを条件として引き起こされる行動は──
□ ◆ □ ◆ □
邪悪深殿 一層
「……っと、やっぱりこうなったか」
『創者様!』
「エクリ、無事だったか。いやー、失敗したな。やっぱり、人の身でヤバい奴に手を出すのは止めた方がいいってことだ」
時間を確かめるように懐中時計を開くと、針は長針短針共に真っすぐ上を指している。
つまりはエネルギー切れ、先ほど起きたであろう事象のために使い切っていた。
「“無影供”、使っておいて正解だったな」
響きで分かると思うが、[カゲフミ]の持つ能力の中でも極めてチート臭い能力の一つである“無影供”。
使うだけで自身に害を及ぼした事象を、すべて無効化できる。
それがどんなモノであれ、時間を遡るように無かったことにするのだ。
事前に『クロノトリガー』を使い、これを仕込んでおいた。
結果、何かあったと思われるが、それでも無事に逃げ出せたわけだ。
──俺は何が起こった覚えていられない、だが観測者は俺だけじゃないからな。
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