虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

文字の大きさ
上 下
2,251 / 2,825
DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄計画 その09

しおりを挟む


 迷宮から出ようとした俺は、突如として謎の空間に飛ばされた。
 そこには巨大な目玉が一つ、そして問われたのは──

『──キミハ、コントンハスキカイ?』

 脳に直接伝わってくるそれは、意味を瞬時には理解できない……はずの文字の羅列。
 だがたしかに──『混沌』、その言葉だけははっきりと伝わってきた。

「混沌、ですか……」

『ウソイツワリナク、ソッチョクナカンソウガホシイカナ? アア、フカイナコタエダカラッテテヲダシタリハシナイヨ』

「では、お望みの通り率直な感想を──私個人としては、好きですね。ただし、家族を巻き込むのであればお断りですがね」

『……フーン、リユウヲキイテモ?』

 手を出さないと言っていたはずなのだが、少々目玉が血走っている気がする。
 煽り耐性、どうなっているのだろうか……まあ、説明はしておくけど。

「混沌、というよりも規律や決まりに縛られない生き方、ですかね? 私の家族がそれらの影響で望まぬ選択を強いられる。そのようなことさえなければ、混沌もいいでしょう」

『ツマリ、カゾク……マモルベキソンザイサエイナケレバ、サンドウシテクレルト?』

「──あ、いえ、そのようなことをお考えになられる方とは、相容れませんのでお断りですかね?」

『──ア゛ァ!?』

 目玉がギョロリとこちらを睨みつける。
 血走った眼が向ける視線は、文字通り人を殺す死線だった。

「守るべき者が居るのは弱くなること、そう言う人がいるのは百も承知です。それでも、私は平穏を願います……」

『グヌヌヌ……モウイイ!』

「っ……!?」

 目玉が瞬きを一つ、すると何も無かった空間が切り替わったかのように突如として変化していた。

 そこはうじゃうじゃと触手が、目玉が、そして■■■■──

「あっ、ヤバ──」

『■■■■■■■■■■■■■■■■!!』

 ことばが、いみが、せかいをにんしき、できな……したくない──。

『!?』






  □   ◆   □   ◆   □

 ──『プログレス:クロノトリガー』。

 それは行動を予約する、そんな効果を秘めた『プログレス』。
 条件を指定しておき、それが満たされると自分の認識に関係無く発動する。

 だからこそ、望まぬタイミングで起動してしまうこともあるデメリット付き。
 そんな制約があるのだが、発動条件を厳しくしておけばそれだけで問題は無くなる。

 今回の場合、条件は『強制[ログアウト]が発生するレベルの精神負荷』。
 相手が侵略者か宇宙的恐怖の使者であると分かった時点で、これを条件にしておいた。

 そして、それを条件として引き起こされる行動は──

  □   ◆   □   ◆   □

 邪悪深殿 一層

「……っと、やっぱりこうなったか」

『創者様!』

「エクリ、無事だったか。いやー、失敗したな。やっぱり、人の身でヤバい奴に手を出すのは止めた方がいいってことだ」

 時間を確かめるように懐中時計を開くと、針は長針短針共に真っすぐ上を指している。
 つまりはエネルギー切れ、先ほど起きたであろう事象のために使い切っていた。

「“無影供”、使っておいて正解だったな」

 響きで分かると思うが、[カゲフミ]の持つ能力の中でも極めてチート臭い能力の一つである“無影供”。

 使うだけで自身に害を及ぼした事象を、すべて無効化できる。
 それがどんなモノであれ、時間を遡るように無かったことにするのだ。

 事前に『クロノトリガー』を使い、これを仕込んでおいた。
 結果、何かあったと思われるが、それでも無事に逃げ出せたわけだ。

 ──俺は何が起こった覚えていられない、だが観測者は俺だけじゃないからな。

しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する

こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」 そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。 だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。 「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」 窮地に追い込まれたフォーレスト。 だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。 こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。 これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。

【完結】お父様に愛されなかった私を叔父様が連れ出してくれました。~お母様からお父様への最後のラブレター~

山葵
恋愛
「エリミヤ。私の所に来るかい?」 母の弟であるバンス子爵の言葉に私は泣きながら頷いた。 愛人宅に住み屋敷に帰らない父。 生前母は、そんな父と結婚出来て幸せだったと言った。 私には母の言葉が理解出来なかった。

〈完結〉この女を家に入れたことが父にとっての致命傷でした。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」アリサは父の後妻の言葉により、家を追い出されることとなる。 だがそれは待ち望んでいた日がやってきたでもあった。横領の罪で連座蟄居されられていた祖父の復活する日だった。 十年前、八歳の時からアリサは父と後妻により使用人として扱われてきた。 ところが自分の代わりに可愛がられてきたはずの異母妹ミュゼットまでもが、義母によって使用人に落とされてしまった。義母は自分の周囲に年頃の女が居ること自体が気に食わなかったのだ。 元々それぞれ自体は仲が悪い訳ではなかった二人は、お互い使用人の立場で二年間共に過ごすが、ミュゼットへの義母の仕打ちの酷さに、アリサは彼女を乳母のもとへ逃がす。 そして更に二年、とうとうその日が来た…… 

愛していました。待っていました。でもさようなら。

彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。 やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。

私はいけにえ

七辻ゆゆ
ファンタジー
「ねえ姉さん、どうせ生贄になって死ぬのに、どうしてご飯なんて食べるの? そんな良いものを食べたってどうせ無駄じゃない。ねえ、どうして食べてるの?」  ねっとりと息苦しくなるような声で妹が言う。  私はそうして、一緒に泣いてくれた妹がもう存在しないことを知ったのだ。 ****リハビリに書いたのですがダークすぎる感じになってしまって、暗いのが好きな方いらっしゃったらどうぞ。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

あなたがそう望んだから

まる
ファンタジー
「ちょっとアンタ!アンタよ!!アデライス・オールテア!」 思わず不快さに顔が歪みそうになり、慌てて扇で顔を隠す。 確か彼女は…最近編入してきたという男爵家の庶子の娘だったかしら。 喚き散らす娘が望んだのでその通りにしてあげましたわ。 ○○○○○○○○○○ 誤字脱字ご容赦下さい。もし電波な転生者に貴族の令嬢が絡まれたら。攻略対象と思われてる男性もガッチリ貴族思考だったらと考えて書いてみました。ゆっくりペースになりそうですがよろしければ是非。 閲覧、しおり、お気に入りの登録ありがとうございました(*´ω`*) 何となくねっとりじわじわな感じになっていたらいいのにと思ったのですがどうなんでしょうね?

処理中です...