虚弱生産士は今日も死ぬ ―遊戯の世界で満喫中―

山田 武

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DIY、監獄ライフに勤しむ

脱獄計画 その02

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 エクリの努力の成果──擬似スキル。
 その一つである壁歩きによって、壁と平行になりながら俺は迷宮を移動している。

「見つけた、アレが侵略済みの個体か……」

 壁から少しレベルアップ(?)して、天井に足を着けながら移動していた俺。
 そこから眼前を見下ろし、確認したのは黒い靄に包まれた邪悪な魔物たち。

「…………けどまあ、速いよな」

 そして、そんな邪悪な魔物たちを一瞬で一掃していく星敵たち。
 初めの内は警戒していたようだが、要はその黒い霧に近づかなければいいだけの話。

 遠くから遠距離攻撃を放ってしまえば、靄も届くことなく魔物を殲滅できる。
 星敵たちもバカではない、魔物の星敵も危険を加味したやり方で戦っていた。

「『プログレス』をほとんどの奴が使っているから、ドロップ変換でアイテムがどんどん飛んでいくな」

 元より、魔物であろうと魔物を討伐すればアイテムが落ちる。
 人と違って食べ物になるらしいが……誰も侵略者バシビウスが干渉した物は食べたくないよな。

 重要なのは本来地面に落下するそれらが、『プログレス』によって回収されている点。
 ……装備している理由はアレだ、その方が稼ぎが良くなるという俗なもの。

 そんなこんなで、魔物の星敵のほとんどが今では『プログレス』の使用者だ。
 人の方は警戒などもあって、そのままの者も多いが……まあ、そちらはいいとしよう。

「『SEBAS』、視認したがどうか?」

《確証が取れました──旦那様がこれまで相対したどの侵略者とも、異なる種として識別されます》

「ドローンでの偵察でも、そういう風に言っていたな……さて、どうしたものか」

 この迷宮は一層だけでなく、最下層であるここから更に上へ層が積み重なっている。
 上に行けば行くほど、魔物は弱くなっていくらしい……まだ何かあるに違いない。

「情報屋の話だと、侵略者が結局上に行けば行くほど強いらしいからプラスマイナスがゼロなんだよな。ついでに言うと、レベルが低くなってもその分数が出るらしいし、あんまり関係無いし──っと、『空歩』起動」

 天井を歩いていた俺は、違和感に従うままに足を離す。
 宙で半回転した後、何も無い場所で足を伸ばし──何かあるかのように曲げ、蹴る。

 この時、体の中で精気力らしきものが足の方へ流れ出る。
 それが中に漏れ出ると、宙で一時的に膜となって踏み場と化す。

 スキルがあれば簡単にできる事象も、擬似スキルでは一から行う必要がある。
 ──なんて言いつつも、やっぱりエクリがやってくれてあるので簡単なんだけども。

「危ない危ない……上に潜んでいたのに気づかなくてもいいだろうよ」

『■■■!』

 狂ったように吠えるソレは、初日に相対した獣にも似たナニカ。
 星敵が相対している禍々しい魔物たち、それが不定形と化したような異形さ。

 正直、嫌な予感はしていたがそれが確信レベルに高まっていく。
 異形の存在、そして侵略者…………手を組みやがったよ。

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